医療特集

脳卒中について - 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の仕組みと症状

更新日:2017/04/13

脳卒中は、正式には脳血管障害といいます。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は脳卒中の代表的な病名です。生命にかかわり、後遺症を残すことも非常に多い重大な病気として知られています。

脳卒中の発症の仕組みや予防などについて伺いました。

NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任 井上 智弘

お話を伺った先生:

脳卒中の現状

厚生労働省の調査によると、平成26年の脳卒中の患者数は約117万9,000人で、男性が約59万2,000人、女性が約58万7,000人とされています。また、患者総数は年々減少の傾向がみられます(図1)。

図1 脳卒中の総患者数(厚生労働省 平成26年患者調査の概況より)

図1 脳卒中の総患者数(厚生労働省 平成26年患者調査の概況より)

脳卒中の患者数が減少している理由として、井上先生は次のように推測しています。

「私の経験では、重篤な脳出血を起こした患者さんの数は20年前のほうが今よりずっと多かったような気がします。減少の理由はいくつかあると思いますが、一つには(脳卒中を起こす原因の一つである)高血圧の薬で、1日1回飲めばよいものが増えてきて、薬による血圧管理(正常域血圧を維持すること)がしやすくなったことが言えるでしょう。またこの当時より喫煙率が減ってきていることも無関係ではないと思います」

しかし、患者数が減ってきているといっても、「介護が必要になった主な原因」を見ると第1位が脳卒中であり、決してあなどれない病気のひとつであることに変わりはありません。

図2 65歳以上の要介護者等の介護が必要となった主な原因(男女総数)

図2 65歳以上の要介護者等の介護が必要となった主な原因(男女総数)
厚生労働省「国民生活基礎調査(平成25年)」より

脳卒中の種類

脳卒中は、脳の血管が「詰まる」タイプと「破れる」タイプの大きく2つに分けられます。「脳梗塞」は詰まるタイプ、「脳出血」と「くも膜下出血」は破れるタイプに分類されます。(図3)。

図3 脳卒中の種類

図3 脳卒中の種類

脳卒中のうち最も患者数が多いのが脳梗塞です(図4)。以下、まず患者数の多い脳梗塞から解説します。

図4 脳卒中の種類別患者数の割合(平成26年患者調査より)

その他の内訳:

その他の脳血管疾患
11.2%
一過性脳虚血発作及び関連症候群
1.8%
脳動脈硬化(症)
0.5%

図4 脳卒中の種類別患者数の割合(平成26年患者調査より)

脳梗塞の分類と症状

梗塞(こうそく)とは、何らかの原因で血管が狭窄(きょうさく:狭くなること)したり、閉塞(へいそく:詰まること)したりして血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が届かなくなった細胞が壊死(えし:細胞の一部が死ぬこと)する状態です。これが脳に起きたものを「脳梗塞」といいます。

また、血管が詰まる原因となる血液の塊を血栓(けっせん)といいますが、血管に血栓ができて詰まったものを「血栓症(けっせんしょう)」、他の場所にできた血栓がはがれ、流れてきて詰まらせたものを「塞栓症(そくせんしょう)」といい、区別しています。

脳梗塞は、その起こり方によって大きく4つに分けられます。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、動脈硬化によって引き起こされる小さな梗塞です。脳の深い場所で、太い血管から細い血管に枝分かれしている穿通枝(せんつうし)という領域に発生します。

ラクナ梗塞が起こると、軽い運動障害やしびれ、ろれつが回らないなどの症状が現れます。細い血管が詰まるため、脳への影響範囲が小さいからですが、決して軽い症状ばかりというわけではありません。例えば運動神経を支配している領域がピンポイントで梗塞していれば、重篤なまひが出ることもあります。

図5 ラクナ梗塞

図5 ラクナ梗塞

ラクナ梗塞はこれまで日本人に多いタイプの脳梗塞とされてきました。2000年より前には、脳梗塞の50%以上であったという報告もありますが、1999~2000年に実施された国内調査でラクナ梗塞38.8%、後述するアテローム血栓性脳梗塞33.3%とされています (※1) 。また2009年にはラクナ梗塞31.9%、アテローム血栓性脳梗塞33.9%とされ、現在ではラクナ梗塞の割合は3割程度と減少しています (※2)

※1 日本脳卒中学会 治療ガイドライン2009の概説より

※2 脳卒中データバンク2009より

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、アテローム性動脈硬化によって脳の太い動脈に起こります。アテロームとは、粥状(じゅくじょう)になったコレステロールなどの老廃物のことで、これが動脈の血管を形成している内皮に堆積(たいせき)して硬くなったものがアテローム性動脈硬化です。

アテローム性動脈硬化による血管内皮の盛り上がりを「プラーク」といいます。アテローム血栓性脳梗塞では、プラークによって脳動脈の血管内腔が狭くなり、そこにできた血栓が血管を閉塞させてしまいます。

図6 アテローム血栓性脳梗塞

図6 アテローム血栓性脳梗塞

また、動脈硬化を起こしている頸動脈などの血管壁のプラークがはがれて脳の動脈に移動し、狭窄部に詰まって発症することもあります。

ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は、脳のどの場所にでも起こりえます。起きやすい場所を特定することはできません。

アテローム血栓性脳梗塞の発症は、安静時に多くみられます。特に睡眠時に発症し、起床時などに半身まひやろれつが回らない(構音障害:こうおんしょうがい)などの症状がみられます。時間がたつにつれて悪化します。発症の前に一過性脳虚血発作(後述)を経験しているケースがよくみられます。

「アテローム性動脈硬化はゆっくり進行するため、枝のようになっている脳の血管の一部が閉塞する間に、別の枝から送られる血液が主流になっていくなどして、発症しても症状が軽いことがあります。また、症状がすぐに治まりそのまま放置されてしまうケースもあります」(井上先生)

症状が軽い、あるいは消失した場合でも安心せず、必ず医師にかかるようにしましょう。

心原性脳塞栓症

不整脈の一種である心房細動や心筋梗塞、弁膜症などの心疾患があると、心臓内に血栓ができやすくなります。この血栓がはがれて血流に乗って移動し、脳の血管を詰まらせるのが心原性脳塞栓症です。血栓には比較的大きいものが多いので、脳の太い血管が詰まり、重症化しやすい脳梗塞です。

特に心房細動は脳梗塞発症の大きな危険因子です。

心原性脳梗塞は、突然症状が現れます。半身まひや感覚障害に加えて、失語症(言葉がうまく思い浮かばない、出ない)、意識を失うなどの重篤な症状が多くみられます。

アテローム血栓性脳梗塞ほど多くはありませんが、一過性虚血性発作が先行することがあります。

【関連】 心房細動(病気事典)を読む

図7 心原性脳塞栓症

図7 心原性脳塞栓症

一過性脳虚血発作(TIA)

アテローム性動脈硬化でできた小さな血栓が脳の細い血管(末梢血管)に詰まります。しかし、短時間(早ければ数分)で血栓が溶けることがあり、血流が回復することで症状は一時的で一過性に消失します。これが一過性脳虚血発作で、脳梗塞のまえぶれといわれており、早期の受診が望まれます。

一過性脳虚血発作の症状は、片目の視力喪失(一過性黒内障)や脱力、半身まひ、しびれ、失語、めまいなどです。また、食事をしているときに茶碗や箸を落としたり、ちょっとの間意識を失って我に返ったりすることもあります。短時間で改善するので見過ごしがちですが、このような症状が脳梗塞の前兆となることが多いので、気づいたときにはすぐに受診することが肝心です。

脳卒中治療ガイドライン2009では、TIA発症後90日以内に脳卒中を発症する危険度は15~20%という調査結果を紹介しています。

脳出血の仕組みと症状

脳出血は、主に脳の深部にある大脳基底核(だいのうきていかく)などに血液を送っている穿通枝が破たんし出血するものです。実際には脳のどこにでも起こる可能性があります。

「原因はさまざまですが、外傷や他の病気に起因するものを除くと多くは高血圧が原因です。あるとき急に血圧が高くなったから出血した、と思われがちですが、そうではありません。何十年も高血圧の状態が続いていたとき、その末に出血が起こるのです」(井上先生)

脳出血を防ぐには、まず血圧のコントロールが重要です。

図8 脳出血

図8 脳出血

脳出血の症状

脳出血は、呼びかけに応えない、聞いてわかるが話せない、思い通りの運動ができない、視覚、聴覚、触覚に異常がみられないのに対象を認識できない、半身まひなどが代表的な症状です。

脳出血は突然に重篤な症状が起こると思いがちですが、脳出血も軽いものだと脳梗塞と区別がつかないほど同じような症状がみられます。

くも膜下出血の仕組みと症状

脳は皮膚・頭蓋に覆われていますが、さらにその内側にある髄膜と呼ばれる3層の膜に包まれて固定されています。髄膜は外から、硬膜・くも膜・軟膜の順に重なっていて、くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)は髄液で満たされ、太い血管が走っています。くも膜下出血は、このくも膜下腔に出血するものです。

脳の太い動脈の分岐部にできる袋状にふくらんだこぶを動脈瘤(どうみゃくりゅう)といいます。脳にできた動脈瘤が大きくなると、こぶの中に入ってきた血流の乱れにより、破裂しやすくなります。

くも膜下出血は、脳のしわの間にある動脈のこぶが破れて出血する疾患です。くも膜と軟膜の間に出血して広がっていくもので、脳自体は損傷されませんが、出血により脳が圧迫され、脳虚血などの重篤な結果を生じることが珍しくありません。

脳動脈瘤は、先天的にできやすい体質もありますが、高血圧や動脈硬化、喫煙などの後天的因子が重なって形成されると考えられており、中高年から高齢者に好発します。

図9 くも膜下出血

図9 くも膜下出血

くも膜下出血の症状

突然、頭をバットで殴られたような、今までに経験したことのないような激しい痛みが起こります。意識障害、けいれん、吐き気・嘔吐などがおもな症状です。くも膜下出血ではその3分の1が死に至るといわれます。

井上 智弘先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任 井上 智弘

NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任

取得専門医・認定医

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • ECFMG certificate
  • 医学博士(東京大学)