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「てんかん」を知っていますか? - 原因・症状・検査 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


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医療特集

「てんかん」を知っていますか? - 原因・症状・検査

更新日:2016/08/01

てんかんは「発作を起こす病気」ということ以外はよく知らない、という人が多いのですが、実は発症のピークは高齢期にあり、身近にも起こりうると知っておきたい病気です。

NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長 松尾 健

お話を伺った先生:

てんかんとは

てんかんは、突発的なてんかん発作(意識障害やけいれんなどの症状)を繰り返し起こす病気です。大脳の表面を覆っている大脳皮質の神経細胞の、興奮と抑制のバランスが崩れることで発作が起こります。

脳のどの部位で異常活動が起きるかによって表に出る症状が違ってきます。こうした症状は脳の病気によって起きていることもあれば、MRIなどで脳に異常が見られなくても起きることがあります。

てんかんの患者数・傾向

てんかんの有病率は、報告によってばらつきがありますが、人口の1%弱ぐらいだと言われています。日本人の患者数は65万~85万人だと推計されています。

てんかんの発症年齢はU字形に分布しています。まず、新生児・乳幼児期に最初のピークがあり、生まれてまもなく「てんかん」と診断された新生児・乳幼児が多く含まれています。その後しばらく横ばいに推移しますが、20歳を過ぎると低下します。50歳を過ぎる頃からまた増加に転じて、70~80歳の頃に出生直後と同じぐらいの数字になります。その後はさらに増加が続きますので、てんかんの発症が最も多いのは高齢者で、加齢と共に増えていきます。

なぜ発作が起こるのか

大脳には数百億個もの神経細胞が存在し、神経細胞の間の電気的な流れによって、情報伝達が行われています。通常は神経活動の興奮と抑制のバランスが保たれていますが、例えば外傷などで脳の神経細胞が傷つくようなことがあると、脳内の電気的なバランスに乱れが生じます。これにより神経細胞が過剰に興奮し、発作を引き起こします。

頭部外傷などの経験があっても発作などの症状は見られず、脳には問題がないと思われる場合でも、念のため脳波検査をしてみると異常な波が見られるということが時々あります。過剰に興奮している神経細胞の集団が小さく、脳波の異常がほんの一瞬であれば、普段は発作を起こすまでには至りませんが、何かのきっかけで広範囲の神経細胞が過剰興奮した際には発作を起こしてしまいます。

てんかんの発作は、脳内の神経細胞の過剰興奮が一定量を超えたときに起こるのです。

発作が起きたときは

突発的に意識障害やけいれんを伴うてんかん発作が起きても、神経細胞の過剰な興奮は通常であれば5分程度で治まります。このため松尾先生は「てんかん自体で命を落とすことはほとんどありません。ただし、自動車の運転中に発作が起きれば、自分自身も生命の危険がありますし他人を巻き込んでしまうかもしれません。入浴中であれば溺れてしまいます。事故が起きる前に、きちんとした対処が必要です」と語ります。

※発作発生時の注意点等について、詳しくは後述します。

てんかんを起こしやすい脳の部分

大脳には、前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉という大きく4つの領域があり、様々な役割を分担しています(図1)。

図1 大脳半球外側面

図1 大脳半球外側面

てんかん発作につながる異常興奮は大脳のありとあらゆる部分で起こりますが、側頭葉、前頭葉が特に起きやすい場所だと言われてます。

側頭葉の一番内側には、脳全体をコントロールする大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)という場所があります。大脳辺縁系は、海馬(かいば)や扁桃体(へんとうたい)を中心に脳内の記憶や情動をつかさどったり、脳の色々な場所に指令を出したりしているため神経細胞の動きが活発で、てんかんを起こしやすい部分でもあります。

てんかんの分類

てんかんは、その原因によって「症候性てんかん(しょうこうせいてんかん)」と「特発性てんかん(とくはつせいてんかん)」との大きく2つに分類されます。

「症候性」と「特発性」

「症候性てんかん」とは、頭部の外傷、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、アルツハイマー病など、何らかの原因があって起こるてんかんで、高齢者に多いタイプです。乳幼児の場合では、出生時に仮死状態や低酸素などのトラブルがあり、脳に何らかの障害が生じたことによって起こるてんかんが含まれます。

もうひとつの「特発性てんかん」は、特別なきっかけもなく起こる原因不明のてんかんで、脳の画像検査では異常は見つからず、ある日突然誰にでも起こり得るものです。患者数は症候性てんかんがおよそ4割、特発性てんかんがおよそ6割といわれています。

「部分(焦点性)」と「全般」

てんかんには脳波の異常を起こす範囲によって「部分てんかん」と「全般てんかん」という分類もあります。

「部分てんかん」は脳の一部分に脳波の異常が起こるもので、「焦点性てんかん」とも呼ばれます。また、「全般てんかん」は脳のかなり広範囲に及ぶ異常が起こるもので、脳の両側の前から後まで全部が興奮しているということもあります。

てんかんを分類するには、これらの2つの軸で、「特発性の部分てんかん」というように、2×2パターンで分けると、それに応じて治療が進めやすくなります(図2)。

図2 てんかんの分類

図2 てんかんの分類

「てんかん診療は、発症年齢、発作症状、発作の起きやすい時間帯などの問診に加え、脳波検査やMRI検査などの結果を参考にして「特発性」か「症候性」か、「部分(焦点性)」か「全般」かという4分類のどこに該当するかをまず見極めることが重要です」(松尾先生)

症候性てんかんの原因

「症候性てんかん」は、脳の障害によって起こるもので、その多くは部分てんかんです。

小児期に発症するもの

小児期に発症する症候性てんかんの原因として、先天性のものや妊娠・出産時に起きた何らかの問題による脳損傷、また頭部外傷、脳の感染症などが挙げられます。問題が起きた直後からてんかん症状が現れることもあれば、2~3年後になって、さらには10年を過ぎてから現れることもあります。

「例えばとても難産で、新生児が低酸素脳症になってしまった場合などでは、数年経ってからてんかんを発症することがあります」(松尾先生)

知的障害を伴う場合

子どものてんかんは、知的障害を伴う場合があります。知的障害のある子はてんかんを併発しやすく、逆に脳自体に何か問題があっててんかんを頻繁に起こすような子は、それによって知的障害を起こすことがあり得ます。てんかんと知的障害、どちらが先に起こったかは明確でない場合もあります。

頭部への外傷

公園の遊具から落ちたとか、急に走り出して柱に激突したとか、子どもの頃に頭を打ったという経験は誰にでも心当たりがあることですが、気にされる方も多いと思います。

「頭にこぶができるくらいのけがであれば、基本的にてんかんとは無関係だと考えていいでしょう。外傷によっててんかんを発症するのは、例えば車にはねられて半日目が覚めないというような、高エネルギー外傷と言われる強い外力が加わった場合がほとんどです」(松尾先生)

成人・高齢期に発症するもの

成人、特に50歳以降に起きるてんかんの原因で一番多いのは脳血管障害です。脳血管障害は脳卒中とも呼ばれ、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などが含まれます。脳血管障害になると脳の神経細胞もダメージを受けます。高齢になると足腰が弱って転倒も増えるので、頭部の外傷によるてんかんも増加する一方で、てんかんにつながる脳腫瘍も増えます。また、最近注目されているのが、アルツハイマー病などの神経変性疾患を原因とするてんかんです。

遺伝要因が関係する場合

一部のてんかんには、遺伝的要因が関係しているものがあります。常染色体(じょうせんしょくたい)優性家族性側頭葉てんかん、良性家族性新生児てんかんといった遺伝性のてんかんがあります。

また、てんかんそのものが直接的に遺伝しているのではなくて、神経線維腫症(しんけいせんいしゅしょう)I型や結節性硬化症(けっせつせいこうかしょう)といった、てんかんを起こしやすい脳の構造異常が遺伝する場合があります。こちらは、間接的なてんかんの遺伝と言えるかもしれません。

「良性」と付いたてんかんは、年齢依存性のものが多いので、例外はありますが多くは思春期ぐらいまでには治ると考えてよいでしょう。

てんかんの症状

てんかんは、意識障害やけいれんなどの発作が主な症状です。周りが気づかないくらいの短時間のものから意識を失って突然倒れ、全身けいれんに至るものなど、発作といっても様々です。

部分発作

部分発作

全般発作

全般発作

図3 発作のイメージ

部分てんかんで起きる部分発作は、脳の一部分のみが異常興奮し、体の一部分に不随意運動・感覚異常などが見られます。意識障害を伴う場合と伴わない場合があります。部分発作には、主に以下の4つがあります。

  • ①運動発作(手や顔の一部がピクピクする・眼と顔が片方へ引き寄せられる)
  • ②感覚発作(体の一部がしびれる、見ているものがゆがむ・変なにおいがする・ぶんぶんと音が聞こえてくるなど)
  • ③自律神経発作(胃のあたりから吐き気のような不快感が上がってくるなど)
  • ④精神発作(言われている言葉の意味がわからなくなる・以前見た情景がよみがえる・急に恐怖や不安を覚えるなど)

また全般てんかんで起きる全般発作は、最初から脳全体または大部分が発作を起こすもので、全般性けいれん発作が起きて多くは意識を失います。

しかし、脳波の異常が広範囲に及ぶからといって、全般てんかんが部分てんかんより必ずしも重症であるというわけではありません。例えば、子どもに多い全般発作で、2~3秒ふっと意識を失うような発作を起こすものがあります(欠神発作:けっしんほっさ)。周囲の人が全く気づかないような発作を何回か繰り返しているうちに、担任の先生がやっと気づくという例もあります。

一方で、部分てんかんの発作でも二次性に全身けいれんが起こり、5~10分間止まらないような重症の発作を起こすこともあります。

典型的な症状がない場合

けいれんはてんかんの典型的な症状の1つですが、高齢者の場合にはけいれんを起こさない非けいれん性のてんかんが圧倒的に多いのです。認知症ではないかと受診した人が脳波をとってみたところ、てんかん特有のパターンを示し、抗てんかん薬の内服で改善するといったこともあります。同様に子どもの場合にも、発達遅滞などの原因を調べる中で脳波異常が判明し、てんかんと診断されることがあります。

発作の前触れ・きっかけ

てんかん発作が起きる前に自覚できる“前触れ”はあるのでしょうか。

「発作の前触れは、人によって感じることもあれば、ないこともあります。“何となくそわそわする”といった抽象的なものから、“胃がむかむかする” “吐きそうになる”と具体的な症状を訴える人もいます。はっきりと前兆があって、その後必ず発作が起こるということであれば、前兆の始まりが発作の始まりとして捉えていいでしょう」(松尾先生)

発作のきっかけも人によって様々です。数年前に、テレビのアニメーションのピカピカした光の点滅が刺激となって、てんかんが誘発されるとして問題になったこともあります。また、精神的な緊張が引き金になることもあり、例えば、電車に乗ると発作を起こすという人もいます。きわめて特殊なケースでは、読書てんかんと言って、本を読むとてんかんを起こす人もいます。

一般的に最も多いのは、寝不足、疲労の蓄積、過度のストレス、引っ越しや転職などの環境変化がきっかけになるケースです。

「ストレスは無理のない範囲で避けるのが無難です。てんかんのきっかけが分かっている人の場合は、細心の注意を払うに越したことはありません」(松尾先生)

てんかんの診断・検査

脳波検査は健康診断に含められている検査ではないので、意識障害やけいれんといった症状が出たことをきっかけに脳波検査を行い、てんかんと診断されるという流れが多いようです。

何科を受診したらよいか

初めて発作を起こして初診は救急だった、ということもあるかもしれませんが、一般的にてんかんは、神経内科、脳神経外科、小児の場合は小児科で診療することになります。またてんかん患者は、精神発達障害や自閉症のような知的障害、解離性障害などを伴うことも少なくないので、精神科で診療することもあります。少数ですが、てんかんの専門医療機関もあります。

NTT東日本関東病院では「てんかんセンター」を設置しており、周辺の医療機関からの紹介を基本に、子どもから高齢者まで幅広く対応しています。

脳波検査

検査で欠かせないのは脳波検査です。脳波検査は、頭皮や耳たぶに計24個ほどの電極を付けて脳神経活動で生じる微弱な電波を記録していくもので、1回の検査に約30分を要します。てんかんには特有の異常な波形のパターンがいくつかありますが、1回の検査で診断を確定できないことも多く、3~4回検査を行うとてんかん患者の約9割で脳波異常が確認できると言われています。

発作を起こしていないとき(発作間欠期:ほっさかんけつき)でも、頻度は低いながら脳波異常が認められることがほとんどです。一般的に、脳波異常が高頻度に出るほど発作が起こりやすい状態と考えられます。

なお、高齢者のてんかんは発作を伴わない場合も多く、発見されにくいと先に述べましたが、NTT東日本関東病院では、高齢者の認知症疑いの人に対しても積極的に脳波をとって異常の有無を調べています。

「高齢者の場合は、認知症疑いだった人が実はてんかんだったということが時々あります。そういった場合は、てんかんの薬による服薬治療で見違えるように改善することがあります」(松尾先生)

画像検査

CTやMRIなどの画像検査も行うことがあります。特に初めて発作を起こした人の場合、他の病気ときちんと鑑別することが目的です。例えば、不整脈や、ナトリウムやカリウムのバランスが崩れる電解質異常、糖尿病の血糖管理不良、低血糖による昏睡(こんすい)なども、容易にけいれんを起こしやすくなるので、てんかんとの鑑別が必要となります。

てんかん以外の原因でけいれんを起こした時のほうが生命の危機など、急を要することが多いので、初めて起こしたけいれんで救急搬送された場合は、まず、てんかん以外の原因がないかどうかを調べます。その後、てんかんに特化した脳波や画像検査を行います。

脳磁図検査

脳磁図(のうじず)という検査もあります。これは脳の表面の磁力を測定して、コンピューターが異常な磁気の位置などを計算するものですが、高価な装置と専用の場所が必要なので、実施できる施設は限られます。脳磁図と脳波はそれぞれ一長一短があって、相補的な検査です。脳溝(のうこう)の奥のような深い場所の神経細胞が異常をきたしているようなものは、脳磁図の方が検出しやすいと言えます。

脳波では計測できない深い場所の異常も、脳磁図であれば検出することができるという意味では、脳磁図は有用な検査です。東京では東京大学病院などで実施しています。

松尾 健先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長 松尾 健

NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長

取得専門医・認定医

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本てんかん学会専門医

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