病気事典[家庭の医学]

熱が出た(発熱)

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発熱

発熱とは、脳のなかの視床下部と呼ばれる部分にある体温調節中枢が何らかの原因で異常を起こし、体温が正常より高くなった状態です。発熱のメカニズムについては、まだ不明の点が多々あります。平熱は36・5~37℃前後の人が最も多いのですが、体温には個人差があり、それより高くても低くてもそれが平熱なら問題ありません。自分の平熱を知っておくことが大切です。

発熱から考えられる主な病気

主な症状と、付随する症状から、疑われる病気を調べることができます。
病気名を選択すると、その病気の解説へ遷移します。

高熱

症状 疑われる病気名
全身倦怠感、消耗感、筋肉痛、関節痛、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐 インフルエンザ
膿性の痰、胸痛、呼吸困難、唇が紫色、意識障害 細菌性肺炎
夜間の頑固な激しい咳、10~30代に好発 マイコプラズマ肺炎
鳥との接触歴・鳥の飼育、頭痛、胸痛、血痰 オウム病
のどの痛み、嚥下痛、耳への放散痛、全身倦怠感 急性扁桃炎
激しい頭痛、悪寒、項部硬直、意識障害 細菌性髄膜炎
腹痛 右上腹部痛、黄疸 茶褐色の尿、白い便 A型急性肝炎
血液の混じった下痢 肝膿瘍
黄色い液を吐く 胆石症 胆嚢炎・胆管炎
へそ周囲の痛みから右下腹部痛、吐き気、嘔吐 虫垂炎
下腹部を押して離すと痛む、気分不快、嘔吐 子宮付属器炎
頻尿、排尿痛 腰痛、背部痛、血尿 急性腎盂腎炎
排尿困難、残尿感、会陰部の痛み 急性細菌性前立腺炎
全身倦怠感、息切れ、出血しやすい・とまりにくい、貧血 急性白血病

微熱

症状 疑われる病気名
のどの痛み 鼻みず、鼻づまり、くしゃみ かぜ
急激なのどの痛み、全身倦怠感、頭痛 急性咽頭炎
嚥下痛、呼吸困難、喘鳴 急性喉頭炎
痰、寝汗などが長期に続く、血痰、息切れ 肺結核
頑固な咳が続く クラミジア・ニューモニエ肺炎
腹痛 側腹部痛 血尿、側腹部腫瘤、体重減少、貧血 腎がん
下腹部痛 粘血便、体重減少、痔瘻、肛門周囲膿瘍 クローン病
膿性のおりもの、不正性器出血 子宮内膜炎
関節痛 手指などの朝のこわばり 関節リウマチ
顔面紅斑などの発疹、疲れやすい、血尿、むくみ 全身性エリテマトーデス
筋力低下、筋肉の痛み、眼瞼部のはれた紫赤色の皮疹 多発性筋炎・皮膚筋炎
[ご利用上の注意]
一般的な医学知識の情報を提供するもので、皆様の症状に関する個別の診断を行うものではありません。気になる症状のある方は、医療機関にご相談ください。

何度以上が発熱か

人によって平熱には若干の違いがありますが、一般に37・0~37・9℃を微熱、38・0~38・9℃を中等度熱、39℃以上を高熱、の3段階に分けて考えられています。また、微熱を37・0~37・9℃、高熱を38・0℃以上と分ける考えもあります。

発熱を起こす病気はたくさんありますが、熱がある時は、その程度がどのくらいか、それがどのくらい続いているか、ほかに症状を伴っていないか、などによって原因を考えます。

よほどの高熱でもないかぎり、熱があるだけではさほど深刻に考えないのが普通です。そして、大部分の発熱は一時的なもので、数日あるいは長くても1週間以内には平熱にもどります。

しかし、たとえ微熱であっても、それが長期に続くようなら、肺がんや腎がんなど悪性腫瘍の疑いもあるため、一度調べてもらってください。

高熱が出る病気

主に呼吸器系の症状を伴うもの

咳や痰、のどの痛みなどの呼吸器症状のほか、頭痛・腰痛・関節痛などの全身の痛み、さらに下痢や吐き気などの消化器系の症状も伴うなら、まずインフルエンザを考えます。

インフルエンザやかぜが悪化すると、呼吸困難、胸痛、チアノーゼ(唇、爪、指先などが紫色になること)なども現れ、急性気管支炎や急性肺炎などが発症します。

肺がんは一般に微熱ですが、高熱の出ることもあります。

主に中枢神経系の症状を伴うもの

高熱とともに激しい頭痛や意識障害、けいれん、めまいなどを伴うなら、髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎などが疑われます。髄膜炎では首が板のように硬くなって、前に曲がらなくなる項部硬直(こうぶこうちょく)という症状がよく起こります。

主に消化器系の症状を伴うもの

主に右上腹部が痛むならA型急性肝炎(きゅうせいかんえん)や肝膿瘍(のうよう)、胆石症や胆嚢(たんのう)炎などの肝臓・胆嚢の病気、右下腹部痛なら急性虫垂炎などを考えます。

A型急性肝炎は、A型肝炎ウイルスが食べ物や飲み水を介して体内に侵入する経口感染で起こります。まれにですが、劇症肝炎と呼ばれる状態になることがあり、その半数近くの人が死亡します。

女性の場合、下腹部が痛み、吐き気や嘔吐などがあるなら子宮付属器炎などの婦人科疾患も考慮します。子宮付属器とは卵巣と卵管の総称で、ほとんどが細菌などの感染によって起こります。

主に尿路系の症状を伴うもの

排尿痛や排尿困難、頻尿(ひんにょう)があり、腰痛や側腹部痛なども伴うなら急性腎盂(じんう)腎炎、咽頭炎など上気道感染症から1~2週間後、血尿やむくみが出るなら急性糸球体腎炎の可能性が大です。男性で会陰部が痛むなら急性細菌性前立腺炎などを考えます。

その他

血液のがんである白血病では貧血(全身倦怠感(けんたいかん)やふらつき感、息切れなど)、出血傾向、発熱が主な症状です。皮膚粘膜の点状出血、鼻出血、生理出血などが起こりやすく、またいつまでもとまりにくくなります。

膠原病(こうげんびょう)は一般に微熱ですが、高熱の場合もあります。女性に多い関節リウマチ、若い女性に多い全身性エリテマトーデス、幼小児に多いリウマチ熱などです。

サルモネラなどの細菌性の食中毒にかかると、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れ、時に高熱になり、ごくまれにですが、死亡することもあります。

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