病気事典[家庭の医学]

かんせつりうまち

関節リウマチ<膠原病と原因不明の全身疾患>

関節リウマチ<膠原病と原因不明の全身疾患>について解説します。

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どんな病気か

関節リウマチは、70~100万人の患者数を数え、30~50代の女性に好発します。ひとつの関節にとどまらず、左右対称性に全身の関節にこわばり、痛み、はれを生じ、進行すると関節が壊れます。

しかし、微熱、食欲減退、全身倦怠感(けんたいかん)などの全身症状や、目や口の乾きなど涙腺(るいせん)や唾液腺(だえきせん)、さらに、皮膚、肺などの関節外臓器の症状を伴うこともあり、膠原病(こうげんびょう)のひとつとして位置づけられます。すなわち、従来、関節の病気との認識でしたが、現在ではリンパ球の異常による内科的な全身性自己免疫疾患と考えられています。

関節の炎症が持続すると、関節の破壊を引き起こし、関節の変形や強直(きょうちょく)をもたらし、その結果日常生活動作に制限を来します。関節の破壊は発症2年以内に最も進行するため、極力早期に診断し、適切な治療を開始することがいちばん大切です。

原因は何か

関節リウマチの原因は不明ですが、遺伝や感染する病気ではなく、免疫異常が関係しています。

「免疫」というのは、体に外から異物が入ってきた際に、それを見分けて攻撃し、体を守るシステムですが、「自己免疫」の病気では、このシステムに狂いが生じ、自分自身の体の一部を攻撃します。免疫の司令塔がリンパ球ですが、リウマチでも自分自身を攻撃するリンパ球が病気を引き起こします。

そもそも、「リウマ」とはラテン語で「流れる」という意味ですが、その理由は長い間不明でした。現在、自分自身を攻撃するリンパ球が、全身の関節や臓器に流れていき、あちこちの関節滑膜(かつまく)で炎症を起こして痛みやはれを生じ、皮膚、肺、涙腺、唾液腺などで皮下結節やリウマチ肺などの関節外症状を引き起こすと理解されています。

症状の現れ方

全身の関節にこわばり、痛み、はれを生じます。「朝のこわばり」はリウマチ特有の症状で、起床時に手指などの関節がこわばって動かしにくく、ぎこちない感じを自覚し、温めたり動かすと数分~数時間で消えていきます。

こわばり感に引き続いて関節症状が現れます。関節痛は重要な症状ですが、「痛い」だけではなく、関節の腫脹(しゅちょう)(はれ)、発赤、熱感、運動時痛、関節液がたまる、などの症状を伴います。関節炎は、左右対称性に生じ、しばしば移動性で、手指、手、足、膝などの関節に生じます。

また、微熱、食欲減退、全身倦怠感などの全身症状や、前腕伸側などの皮下結節、目や口の乾き、乾いた咳(せき)、運動時呼吸苦、甲状腺腫などの関節外臓器の症状をしばしば伴います。

関節の炎症は、発症の早期から骨・軟骨に広がり、関節の破壊がどんどん進行すると運動が制限され、元に戻らなくなります。手や足の変形は食事や歩行などの日常生活動作を損ないます。頸椎(けいつい)関節炎は後頭部痛や手のしびれ感を、腱に炎症が波及するとバネ指(指を曲げ伸ばしする際にある角度でひっかかり、無理に屈伸しようとするとポコンと指がはねる状態)を、手関節腫脹は手根管(しゅこんかん)症候群を起こすこともあります。

検査と診断

関節を侵す病気はたくさんあり、関節リウマチの診断は慎重に行うべきですが、同時に、なるべく発症の早期に診断することも重要です。患者にとって関節が壊れて普通の生活ができなくなることが最も不安であり、壊れる前に治療を開始しなくてはいけません。2010年にアメリカと欧州のリウマチ学会が新しい分類基準を作りました。

この基準は、慢性化して関節を壊してしまう関節炎を関節リウマチと定義し、関節リウマチをそうではない関節炎から分類する目的で作られました。この基準では、まず他の病気でないことを鑑別して、次に点数化します。医師が診て関節で炎症があることを確認すれば最高5点、CCP 抗体や血清リウマトイド因子が陽性ならば最高3点、催病期間(症状の持続期間)が6 週間以上で1点、赤沈やCRP が陽性ならば1点、合計10点満点で6点以上であればリウマチと分類します。そのうえで、医師が最終的に診断して、関節が壊れる前に治療を始めます。

すなわち、「痛い」では診断に至らず、医師が関節をさわって、腫脹や関節液貯留などを確認しないと診断できないしくみになっています。リウマトイド因子が陽性だからリウマチであると即決するのは誤りで、一部の健常人や肝臓病患者でも陽性になります。逆に、リウマチ患者の約2割は反応陰性で、陰性だからといって本症を否定はできません。さらに、疲れやすさ、目や口の乾き、乾いた咳などのリウマチ特有の関節外症状は、診断の補助となります。

治療の方法

関節リウマチでは、関節局所や一時しのぎの治療ではなく、全身的な、長期的に計画された治療が必要です。薬物療法が中心となります。

関節リウマチは免疫の異常で発症するため、免疫の異常を抑制し、病気を制御する必要があり、そのために免疫抑制薬が使われます。関節リウマチに対する根本的な治療薬として用いる免疫抑制薬は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)と呼ばれます。抗リウマチ薬は、内服可能な合成抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)、点滴や注射で用いる生物学的製剤で作ったバイオ抗リウマチ薬に分けられます。

一方、抗炎症薬は、疼痛や腫脹の緩和を目標とした補助療法として使用します。シクロオキシゲナーゼⅡ選択性があり、消化管、腎障害が比較的少ないセレコキシブ(セレコックス)を使用します。最強の抗炎症薬は副腎皮質ステロイド薬(プレドニンなど)ですが、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や高血糖、脂質代謝異常などさまざまな副作用があり、一時的な使用に留めるべきです。

世界で最も標準的に使われている合成抗リウマチ薬は、メトトレキサート(リウマトレックス、メトレートなど)です。関節リウマチと診断されれば、禁忌事項がなければまずメトトレキサートで速やかに治療を開始するべきだと推奨されています。メトトレキサートは、日本では1週間単位の投与量として16㎎、8カプセル(錠)まで使うことができ、十分量を使用すれば最も効果が高い合成抗リウマチ薬とされます。一方、他の薬剤と同様に副作用にも注意すべきです。1日あけて副作用止めの葉酸(フォリアミン)を必ず飲んでいただきます。そうすれば大部分の副作用は抑えられるはずですが、特に高齢者では、肝障害、腎障害、骨髄障害、肺障害などの副作用が出ることがあります。したがって、肝障害や腎障害がある方、授乳婦、妊婦に使うわけにいきません。また、メトトレキサートが使用できない人には、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)やレフルノミド(アラバ)などの合成抗リウマチ薬が使われることになります。

メトトレキサートを、週3カプセル(錠)・3カ月以上服用しても効果が不十分な場合、または6カ月服用しても寛解に導入できなかった場合には、「生物学的製剤」が使用されます。私たちの体のなかにある蛋白質を使って作るバイオ医薬品です。比較的安全なうえ、病気の「主犯」をピンポイント攻撃します。主犯のサイトカインであるTNF‐α(アルファ)やIL‐6を標的とした生物学的製剤は、画期的な効果をもたらします。これらの抗サイトカイン療法は、体内で活性化されたリンパ球などを直接抑え込みます。

関節リウマチに用いるバイオ医薬品には、TNFを標的とするインフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンポニー)、セルトリズマブ(シムジア)、IL‐6を標的とするトシリズマブ(アクテムラ)、サリルマブ(ケブザラ)、T細胞を標的とするアバタセプト(オレンシア)があります。また、インフリキシマブについては、薬価が約3割安いバイオシミラー(バイオ後続品)も登場しています(2018年3月現在)。その他、多くの薬剤が治験(効果の検定)段階にあります。

これらの抗サイトカイン療法は、抗リウマチ薬であるメトトレキサートと併用すると、半分近くの人は痛みもはれもなくなり、また、炎症反応などの検査成績も正常化します(「臨床的寛解」といいます)。また、関節の破壊の進行がほぼ完全に抑え込まれ、早いうちから使用すれば身体機能が回復して、普通の人と同じように日常生活が送れるまでに改善します。なお、米国では、脳卒中心筋梗塞の発症率も下がり、寿命が延びたという報告もあります。

さらに、内服薬なのに、生物学的製剤と同じくらい、あるいはそれ以上に効果のある合成抗リウマチ薬としてトファシチニブ(ゼルヤンツ)とバリシチニブ(オルミエント)が発売されました。関節リウマチの病態に関わる多くのサイトカインのシグナルを阻害する薬剤として、期待されています。現在、感染症や悪性腫瘍などの長期安全性に関して市販後調査中です。

一方、これらの新しい治療薬にも副作用があります。しかし、これまでの膨大な報告に基づいて作成された治療指針に沿って適正に使用すれば、深刻な問題はほとんどないはずです。たとえば、病歴、結核反応試験、レントゲンやCT所見などから、結核の可能性があれば抗結核薬の予防投与が推奨されます。また、一番多い重篤な副作用のひとつが細菌性肺炎ですが、ステロイドを使っている人、肺疾患の既往のある人、年齢の高い人には肺炎が起こりやすいことがわかりました。このような人には、肺炎球菌ワクチンの接種が強く勧められます。インフルエンザワクチンも是非とも必要です。したがって、副作用を的確に管理することができる医師や施設で治療することが大事です。

病気に気づいたらどうする

朝起床時のこわばり感の持続、および、左右対称性に多くの関節にはれが現れ、1カ月以上持続すれば、早急にリウマチ専門医を訪れて、適切な診断を受ける必要があります。また、リウマチは全身の病気なので、関節だけでなく、全身を内科的に診察することが必要です。

診断されたら、なるべく早く適切な薬物治療を開始することがその後の鍵を握ります。薬物治療を必要とする場合には、リウマチ・膠原病を専門とする内科を受診してください。手術やリハビリが必要な場合には、リウマチを専門とする整形外科を受診してください。

日常生活では、ストレス、不要な薬剤、感染症など、悪化の要因を避け、バランスのとれた栄養を補給し、体と心の安静を保ってください。適度の運動やリウマチ体操、日常品の工夫や自助具の活用、家族の協力も大切です。病気や薬剤に関する正しい情報を得ることも大変重要です。

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