病気事典[家庭の医学]

ずいまくえん・のうえんとは

髄膜炎・脳炎とは

髄膜炎・脳炎とはについて解説します。

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どんな病気か

髄膜炎は持続する頭痛を主な症状とし、発熱、項部(こうぶ)(うなじ)硬直などの髄膜刺激症状、髄液(ずいえき)細胞増加などが認められます。脳炎は、脳実質の炎症を主体とし、発熱、意識障害、けいれん、髄膜刺激症状などがみられます。これらは、両者を合わせた髄膜脳炎としてみられることがあります。

類縁あるいは同一の疾患群としては、急性脳症急性散在性脳脊髄炎(さんざいせいのうせきずいえん)、遅発性(ちはつせい)ウイルス感染症などがあります。一般的に予後が悪く、早期の診断、治療が大切です。

原因は何か

病原にはさまざまなウイルス、細菌、寄生虫などがあげられ、他臓器での感染巣からウイルス血症、菌血症として、あるいは特発性に髄膜腔(ずいまくくう)や脳実質へ侵入するといわれています(表1)。病因からみた主な髄膜炎は、ウイルス性、細菌性、結核性(けっかくせい)、真菌性(しんきんせい)で、このほか、寄生虫、髄膜がん腫症(がん性髄膜炎)などによる髄膜炎もあります。

急性脳炎では単純ヘルペスウイルスによる単純ヘルペス脳炎の頻度が高く、日本では年間で100万人に3・5人、約400例の発症とされます。日本脳炎の場合7~9月に数例の小流行がみられます。このほか、インフルエンザ風疹(ふうしん)、麻疹(ましん)などに伴う急性脳炎・急性脳症(二次性脳炎)などがあります。髄膜炎菌髄膜炎(ずいまくえんきんずいまくえん)、日本脳炎、プリオン病のクロイツフェルト・ヤコブ病は、感染症法の4類・5類感染症(全数把握)に指定され、届け出が義務づけられています。

症状の現れ方

発熱、頭痛、意識障害、けいれんなどが急性に現れたか、あるいは亜急性(あきゅうせい)、慢性に起こってきたかに注意する必要があります。細菌性髄膜炎ウイルス性髄膜炎ヘルペス脳炎では急性に起こり、結核性・真菌性髄膜炎では亜急性であり、遅発性ウイルス感染症では慢性に数年かけて発症するとされています。

進行すると、深い意識障害、けいれんの重積を示すことがあります。体温、脈拍、血圧、呼吸などのバイタルサイン(生命徴候)の監視も必要になります。

検査と診断

髄膜炎では、髄液検査による細胞数増加の確認が診断上重要です。髄液の外観、細胞の種類、蛋白、糖値、病原検査によって各種髄膜炎の診断の手がかりが得られ(表2)、糖値が低下している場合、細菌性、結核性、真菌性髄膜炎を見分ける必要があります。

脳炎においては、発熱、頭痛、意識障害、けいれん発作などは必ず起こる症状ですが、意識障害などのため、同居している方から病気の起こり方などを聞き出すことが大切です。

赤沈の亢進、C反応性蛋白上昇などの一般炎症所見、髄液所見で細胞数増加がみられ、CT、MRI、脳波などを調べます。ヘルペス脳炎は側頭葉(そくとうよう)・辺縁系(へんえんけい)に60~70%の頻度でみられ、日本脳炎は視床(ししょう)、基底核、黒質によく発症します。脳波では、ヘルペス脳炎において周期性一側てんかん放電がしばしばみられます。

病原の診断では、グラム染色、一般細菌、血液培養、酸菌染色、墨汁染色を行う必要があります。各種ウイルスに対する髄液からのPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応→コラム)を含む病原検索、血清、髄液の酵素抗体、補体(ほたい)結合抗体、血球凝集抑制抗体などの抗体価検査がポイントになります。

PCR法によるウイルスゲノム(遺伝子)の検出は、発症10日以内の急性期で陽性率が高く、この方法は細菌に対しても普及しています。髄腔(ずいくう)内の局所抗体産生をみる場合、血清・髄液抗体価比(正常100以上)などを参考にします。

治療の方法

各種髄膜炎・脳炎には、それぞれの原因に対し特異的な治療があります。髄液所見から細菌性髄膜炎が疑われた場合には、起炎菌の同定(突き止めること)結果を待つことなく抗菌薬投与を開始する必要があります。

結核性・真菌性髄膜炎には、抗結核薬、抗真菌薬を使います。ヘルペス脳炎が疑われる場合、アシクロビルの点滴静脈注射が行われます。

病気に気づいたらどうする

発熱、頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状、あるいは発熱、意識障害、けいれん、髄膜刺激症状などが現れた場合、髄膜炎、脳炎が疑われます。診断に髄液検査、頭部CT・MRI・脳波検査、病原検査が必要であり、加えて意識障害、けいれん、呼吸管理などに迅速に対応できる高次医療機関の神経内科、感染症科などの内科、小児科の受診をすすめます。

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