病気事典[家庭の医学]
はいがいけっかく
肺外結核
肺外結核について解説します。
執筆者:
福井大学医学部附属病院呼吸器内科教授 石崎武志
ここでは、肺以外に発症する結核のうち、主なものについて解説します(図24)。治療の基本については、肺結核を参照してください。
結核性胸膜炎(けっかくせいきょうまくえん)
初感染に引き続いて発病する特発性胸膜炎と、二次結核に伴って発症する随伴性胸膜炎があります。
初感染では、感染巣が胸膜直下で乾酪壊死(かんらくえし)を起こし、それが胸腔内に壊れて生じると考えられています。胸水の培養塗沫(とまつ)検査、胸膜生検(組織をとって調べる検査)で菌の証明、あるいは特徴的な組織病理像を得れば確定診断がつきます。しかし、診断率はそう高くなく、他の疾患を除外しながら、抗結核療法の反応をみて治療的に診断することも多いのです。
胸水中のリンパ球の増加、アデノシンデアミネース(ADA)値の高値も参考になります。胸水は大量であれば、胸腔にチューブを入れて排出します。ステロイド薬を局所注入する場合もあります。
結核性髄膜炎(けっかくせいずいまくえん)
いったん結核性髄膜炎にかかると治療反応性が悪く、死亡するか重い後遺症を残すことが少なくありません。早期発見、早期診断が重要です。幸いにも年間発症は200例未満で、死亡例も30例未満と少なくなってきています。もともと乳幼児・小児に多かったのですが、近年は60歳以上の人に多くなっています。
結核菌が血液に乗って広まることにより発症しますが、初感染病巣から肺門リンパ節をへて静脈角リンパ節に浸潤(しんじゅん)して血流に入る型と、いったん治癒した病巣から血管内に入り込む型があります。中高年の発症者には、血液疾患、膠原病(こうげんびょう)、ステロイド薬を内服中など免疫不全の人が多いようです。また、欧米ではHIV感染者に合併しやすいと報告されています。
発病初期には倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、発熱、頭痛、嘔吐、精神症状が現れやすく、次いで、水頭症(すいとうしょう)によって脳圧が高まって脳浮腫を起こし、意識障害、運動障害、片麻痺(かたまひ)、不随意(ふずいい)運動、けいれん、足の痛み、知覚障害、膀胱直腸障害などを示します。
髄液(ずいえき)中に結核菌を証明することで診断できます。また、髄液中のリンパ球の増加、蛋白量の増加、血糖値の低下、アデノシンデアミネース(ADA)値の上昇も参考になります。脳CT、MRIで水頭症の存在や脳底部髄膜肥厚(のうていぶずいまくひこう)、脳梗塞(のうこうそく)の所見がみられます。
骨(こつ)・関節結核(かんせつけっかく)
近年減っています。結核性脊椎炎(せきついえん)は脊椎カリエスとも呼ばれ、いまだに忘れてはならない病気です(図25)。
脊椎カリエスは胸腰椎部(きょうようついぶ)に好発します。通常、腰痛、微熱、食欲不振など症状は軽微です。診断はX線、MRI、CT検査で椎体骨萎縮(ついたいこついしゅく)・破壊・吸収像と椎体骨前縁からまわりの炎症像(膿瘍(のうよう))を検出します。時に、後腹膜(こうふくまく)内にうみが下降して膿瘍を形づくります(流注膿瘍という)。進行すると椎体骨が破壊されて、猫背(ねこぜ)と膿瘍、脊髄麻痺(せきずいまひ)とが現れます。
結核性関節炎は股(こ)関節、膝(ひざ)・足・肩・手・仙腸(せんちょう)関節に生じやすく、同時に発症する多関節結核はまれです。関節のはれ、運動制限、痛みが早期に現れます。診断は、関節液内の結核菌の証明や、関節滑膜(かんせつかつまく)生検(組織をとって調べる検査)で結核菌の感染に特徴的な病理組織像を得ることで行われます。進行すると、関節が強直(きょうちょく)(硬くこわばる)します。
腎(じん)・尿路結核(にょうろけっかく)
結核菌が、肺から血液に乗って腎臓に広まって生じます。腎皮質から血流の少ない腎髄質(じんずいしつ)や乳頭部に乾酪性(かんらくせい)の空洞を形成し、尿細管に破れて、尿の流れに従って腎盂(じんう)、尿管、膀胱、尿道へと感染します。
病変部が瘢痕化(はんこんか)し、尿管狭窄(きょうさく)や萎縮膀胱(いしゅくぼうこう)を来します。結果として腎機能障害を生じます。排尿痛、頻尿(ひんにょう)、残尿感などの症状は軽く、膀胱炎の症状は反復してみられます。時に、血尿、尿の混濁、腰痛、恥骨(ちこつ)上部痛も経験されます。
診断は尿中の結核菌同定検査で行います。3日間連続で早朝の新鮮尿を採取し、集めた尿を遠心分離器にかけて菌を集めたあと、チール・ネルゼン染色による顕微鏡検査を行います。また、点滴静注排泄性腎盂造影(てんてきじょうちゅうはいせつせいじんうぞうえい)を行い、腎杯(じんぱい)の虫食い像、拡張・変形、空洞形成、腎盂尿管の狭窄・拡張などの変形を調べます。
性器結核(せいきけっかく)
性器結核も激減しています。男性では前立腺(ぜんりつせん)、精嚢腺(せいのうせん)、副精巣(ふくせいそう)の順に多く、一方、女性では卵管、子宮内膜、卵巣、腟壁の順に多いです。
男性では尿路結核に続発しやすいようです。女性では他の臓器結核が血液やリンパ液に乗って広がったものや、男性の性器結核者からの感染などがあります。不妊治療中に発見されることもあります。
症状は精巣部の痛み・はれ・不快感、不妊、月経異常などです。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。
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