医療特集

気管支ぜんそく

佐野虎ノ門クリニック 院長 佐野靖之

執筆者:

季節の変わり目、秋の台風シーズンに多くみられるぜんそく

気管支ぜんそくには実に様々な症状があります。典型的には「ゼーゼーヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい) ※1 や発作性の呼吸困難、息苦しさなどがあれば診断されます。しかし、息苦しさのみあるいはせきのみ、さらには痰(たん)が多いブロンコレアという症状のみ、その他にのどがイガイガして気管部の腫れぼったさや違和感、胸痛、せき込みが激しくて夜寝られない、せき込んで吐きそうになったり、失神するなどの様々な胸部の症状が存在するのです。それゆえ胸部の症状で心臓と関係のないものは、ほとんどがぜんそく性のものと考えることができます。肺の病気でぜんそくと鑑別を要するCOPD(慢性閉塞性肺疾患)である肺気腫は、安静にしていれば問題なく、夜間に症状もなく歩いた時のみに息切れ、慢性気管支炎はどろっとした痰(膿性痰)であり、感染などでこれらが悪化するなど、気管支ぜんそくとはまったく異なります。

気管支ぜんそく

ぜんそくの症状の悪化の要因は様々ですが、季節性のものとして、秋の台風の多いシーズンには外来患者が約2倍に増加するなど低気圧の影響がみられます。また、6月の梅雨の時もそれなりに悪化がみられ、天候、あるいは低気圧、気圧の変動、雷が鳴る時など様々な原因があります。さらに、秋には夏に増えたダニの死骸が舞って、そのダニを吸入することによってぜんそくが悪化するともいわれています。

かぜをひくと必ずといっていいほどぜんそくの症状は悪化します。それはかぜのウイルスから出るサイトカイン、ケモカインなどの物質が、気道のアレルギー性炎症を活性化してぜんそくを悪化させるからです。この他にも過労、タバコの煙、ケミカルの臭いなどでも同様にみられます。

  • ※1 喘鳴(ぜんめい)・・・呼吸するたびに出る高い呼吸音。

おかしいと思ったらまず専門医を受診すること

ぜんそくの基本の病態は、気道における慢性のアレルギー性炎症であることがわかっています。慢性的なアレルギー性炎症が気道に起こると、好酸球やリンパ球などの炎症細胞が無数に気道に浸潤(しんじゅん) ※2 して、気道の上皮が剥離・剥脱を起こすと共に気道の内腔を狭くします。さらに痰が多くなり息苦しく発作状態に至ります。既述のようにタバコの煙やケミカルの臭いに敏感に反応し、それによって発作が起こる場合も少なくありません。働きすぎて過労に陥った人もぜんそく症状は悪化の一途をたどり、少し動いてもハァーハァー・ドキドキとした息切れ症候群が起こることもあります。

それゆえ胸部の症状がおかしいと感じた場合は、無理をしないで安静を保ち、定められた治療をキチンと行うことが大切です。もしそのような悪化の時に医師にまだ受診したことがない場合は、アレルギー科か呼吸器科の専門医をまず受診し、安定してから近くの先生にその後のフォローをお願いすると良いと思います。

検査ではオートスパイロメータを用いると、肺機能が客観的に数値としてわかりますので理解しやすいと思います。ぜんそくでは肺機能の低下がほとんどの人に認められます。40歳以下で若くしてそれらの低下がある場合には、ぜんそく性としてかなりの確率で診断することができます。もし、オートスパイロメータでの診断結果が正常人との割合で、その比率が10~20%低下するような場合は、かなりの症状がすでに存在するということがいえます。

  • ※2 浸潤(しんじゅん)・・・炎症が起きたとき、炎症部位のまわりに白血球やリンパ球が集まってくることをいう。がん組織が周囲の組織に広がっていくこともさす。

症状から病気を調べる

主な症状と、付随する症状から、疑われる病気を調べることができます。

咳と付随する症状 疑われる病気名
喘鳴、呼吸困難 気管支喘息 喘鳴性気管支炎 異物誤吸入
かぜ様症状 乾いた咳から湿った咳、喘鳴 急性気管支炎
とくに2歳以下、喘鳴、多呼吸、呼吸困難 細気管支炎
その他 発熱のチャート 感染症のチャート

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息切れと付随する症状 疑われる病気名
労作時の息切れ ビヤ樽状の胸郭 COPD
黄~緑色の痰の増加 びまん性汎細気管支炎
体重減少 珪肺症
発熱 特発性間質性肺炎
発熱、胸痛 細菌性肺炎 肺化膿症 オウム病
体重減少、胸痛、血痰 肺がん
嚥下障害、神経痛、かすれ声、血痰、縮瞳 縦隔腫瘍
喘鳴 急性細気管支炎 気管支喘息

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