病気事典[家庭の医学]
たんじゅんほうしん(へるぺす)
単純疱疹(ヘルペス)<感染症>
単純疱疹(ヘルペス)<感染症>について解説します。
執筆者:
東京慈恵会医科大学附属青戸病院皮膚科診療部長・教授
本田まりこ
どんな感染症か
単純ヘルペスウイルスによる感染症で、ヘルペスとも呼ばれています。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型があります。初感染では型に関係なく、体のどこにでも感染して発症します。このウイルスも、前述の水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスと同様に、一度感染すると一生涯、知覚神経節に潜伏しています。
そして、発熱、過労、胃腸傷害、精神的ストレス、日光照射、寒冷、性交渉、時差などの誘因によって、潜んでいたウイルスが再び活性化し、神経を伝わって皮膚にさまざまな炎症を起こします。
1型は主に上半身、2型は下半身に再発を繰り返します。2型は1型と比べて再発頻度が高く、月に1~2回再発する人もいます。
症状の現れ方
初感染の場合は、感染後4~7日で感染部位が赤くなり、のちに水ぶくれがたくさん現れます。その近くのリンパ節がはれて痛みを伴い、発熱、倦怠感(けんたいかん)、頭痛なども伴います。約2~4週間で治ります。乳幼児では、ヘルペス性歯肉口内炎(しにくこうないえん)といって、口腔内に多数の口内炎ができることがあります。
再発の場合は、感染部位が初めは痛がゆくなり、数時間後に赤いぶつぶつや小さな水ぶくれが数個現れます。やがて破れて、じくじくしますが、かさぶたとなり、1~2週間で治ります。
アトピー性皮膚炎の患者さんの場合は、皮膚のバリア機能が低下しているため、単純ヘルペスウイルスが皮膚に付着すると容易に感染し、顔や体の広範囲に水ぶくれが現れます。
これをカポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)といい、初感染、再発のいずれでも生じますが、とくに初感染の場合はウイルスに対する免疫がないために重症化し、死亡することもあります。
検査と診断
症状から診断がつきますが、おでき(毛包炎(もうほうえん))、固定薬疹、帯状疱疹と区別する必要があります。発疹の一部をはさみで採取して顕微鏡で細胞を観察する方法、ウイルスを分離する方法や、ウイルスの抗原または核酸を検出する方法で診断します。
治療の方法
放置しても自然に治りますが、ひどい場合は抗ウイルス薬(ゾビラックス、バルトレックス)を内服します。性器の場合は、ほかの人にうつさないようにするために、抗ウイルス薬の内服が基本です。これは再発時に、ウイルスが精液や帯下(たいげ)(おりもの)のなかにも存在するからです。また、再発が頻回のものでは、バルトレックスを毎日内服する抑制療法が行われるようになりました。
免疫不全者や初感染で重症の場合は、抗ウイルス薬の点滴静注を行います。
病気に気づいたらどうする
できるだけ早期に皮膚科を受診することをすすめます。とくにアトピー性皮膚炎の患者さんは、ひどくならない前に抗ウイルス薬の内服が必要です。
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