病気事典[家庭の医学]

でんぐねつ、でんぐしゅっけつねつ

デング熱、デング出血熱

デング熱、デング出血熱について解説します。

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どんな感染症か

熱帯・亜熱帯地方で主にみられるウイルス感染症で、原因はデングウイルスです。デングウイルスには1~4型の4つの型がありますが、どの型のウイルスでも同様の症状が起こるので、症状から感染したウイルスの型は特定できません。ヒトはデングウイルスに感染した蚊に刺されることによって感染します。これまで海外で感染する感染症とされていましたが、平成26年、日本国内での感染によるデング熱の患者発生が報告されています。

症状の現れ方

(1)デング熱

デング熱は、デングウイルスが感染し症状が現れた患者さんの大多数を占める病気です。

感染後2~10日ほどで突然の高熱で発症します。頭痛、眼の奥の痛み、腰痛、筋肉痛、骨痛が主な症状として現れ、さらに食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、脱力感、全身倦怠感(けんたいかん)も現れることがあります。全身のリンパ節のはれもみられます。また、発熱してから3~5日目には胸、背中、顔面、腕、脚に発疹が出ることもあります。

これらの症状は約1週間で消え、通常は後遺症を残すことなく回復します。

(2)デング出血熱

デングウイルスに感染したヒトのうち、最初はデング熱とほぼ同様に発症し経過しますが、熱が平熱にもどるころに血液中の液体成分(血漿(けっしょう))が血管からもれ出したり、出血の症状が現れたりすることがあります。この病気はデング出血熱と呼ばれ、適切な治療を行わないと死亡することがあります。

血漿のもれは胸水(きょうすい)あるいは腹水(ふくすい)として現れます。出血は比較的軽い点状出血、注射部位からの出血、鼻出血、血便、重篤な吐血、下血と多様です。血漿のもれが進行するとショック症状を起こし、デングショック症候群とも呼ばれます。

検査と診断

海外で感染し帰国後発症する患者さんは年約200人報告されているので、発症前10日以内に熱帯・亜熱帯地域から帰国したという情報は重要ですが、一方、海外への渡航歴がなくても上記の症状が出現した場合にはデング熱、デング出血熱を疑う必要があります。しかし、症状のみでデング熱・デング出血熱を診断することは難しく、血液からデングウイルスやその遺伝子を検出すること、あるいは特異的な抗体を検出することが確定診断には必要です。

治療の方法

デングウイルスに対する治療薬はなく、対症療法が中心です。デング熱・デング出血熱の発熱に対しては、出血傾向を増悪(ぞうあく)させる可能性があるため、アスピリンを使用してはいけないことになっています。デング出血熱に対しては、補液が主な治療法です。

病気に気づいたらどうする

感染症科や内科を受診する必要があります。ヒトからヒトへは感染しません。

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