病気事典[家庭の医学]

くもまくかしゅっけつ

くも膜下出血

くも膜下出血について解説します。

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どんな病気か

脳は図9のように外側から硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)の3枚の膜でおおわれています。くも膜の下(内側)には脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体がありますが、この部分に出血するのがくも膜下出血です。働き盛りの人に起こり、死亡率も高い病気です。

原因は何か

いちばん多いのは、脳の動脈がこぶのようにふくれてそれが破裂する、脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ)です。次に脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)からの出血、頭部外傷によるものがあります。くも膜下出血は、同じ家系内に起こることがあるので、親戚でくも膜下出血を起こした人や未破裂脳動脈瘤がある人がいる場合は要注意です。

症状の現れ方

頭全体、時に前頭部、後頭部などに頭痛が起こります。同時に吐き気、嘔吐、頸の後ろ(うなじ)が凝(こ)る、などのいわゆる髄膜(ずいまく)刺激症状が起きます。

頭痛の第1の特徴は、突然起こり、それが続くことです。突然とは、○時○分○秒にとか、部屋を出て3歩歩いたら頭痛が起きた、というほど突然に起こります。瞬間的にびりっと痛んですぐやみ、またしばらくしてびりっと痛む頭痛は、持続してはいないので、突然起きたとしてもくも膜下出血ではありません。

第2の特徴は、いままで経験したことのないほど強い頭痛であることです。しかし、はじめに軽い頭痛が前駆症状として突然起こり、少したってから強い頭痛が起こることもあります。

出血の量が多い時には、すぐに意識がなくなります。とくに重症の場合には病院にたどり着く前に亡くなる人もいます。

破裂する脳動脈瘤の場所によっては、脳のなかに血腫(けっしゅ)をつくり、片麻痺(かたまひ)が起こることもあります。くも膜下出血は、初めはたとえ軽くてもすぐに再出血を起こしやすく、さらに重体になります。

くも膜下出血の発症後2週間以内には、脳の動脈が細くなる脳血管れん縮という状況が起きます。このため脳の血流が減り、片麻痺などの神経症状を起こします。再破裂と脳血管れん縮は、くも膜下出血の予後を左右する重要な因子です。

検査と診断

今までに経験したことのないほど強い頭痛が突然起こり、その頭痛が続いていればくも膜下出血が疑われます。ただちに頭部CT検査を行い、頭蓋骨の内側で脳の周囲に出血を示す高吸収域(白く描出される)が見られれば、診断はつきます(図10)。その後、すぐに脳血管撮影を行い、破裂した脳動脈瘤や脳動静脈奇形の診断をします。

治療の方法

破裂した脳動脈瘤によるくも膜下出血の場合は、再破裂予防のため、可能であれば手術を行います。通常は動脈瘤に対して、クリッピングという手術をします(図11)。最近では血管内手術といって、血管のなかへ細いカテーテルを挿入し、コイルを入れて動脈瘤の内側に詰める塞栓術を行うこともあります。

どちらの方法をとるかは、患者さんの年齢、動脈瘤の部位、大きさ、形、合併症などによって決まります。病状があまりにも重症の場合は、手術ができないこともあります。

病気に気づいたらどうする

突然発症して持続する、今までに経験したことがないような頭痛が起こったら、ただちに脳神経外科の専門医のいる病院を受診してください。軽い頭痛であっても、念のため受診してください。

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