病気事典[家庭の医学]
とくにきをつけるべきびょうき
とくに気をつけるべき病気<脳・神経・筋の病気>
とくに気をつけるべき病気<脳・神経・筋の病気>について解説します。
執筆者:
国家公務員共済組合連合会立川病院院長
篠原幸人
解説(概論)
脳・神経・筋の病気は治りにくい病気(いわゆる難病)が多いので、どれもが気をつけるべき病気です。
これらの病気のなかで日本人にいちばん多いのは、日本の国民病といわれる脳血管障害(脳卒中)です。成人の死因のトップは悪性腫瘍(がん)であり、第2位は心臓の病気、第3位が脳卒中となっています。しかしがんは全身どこの臓器にも、場合によっては血液にもできる(白血病)ことがあり、ひとつずつの臓器別に病気を分けるとそれぞれの数は少なくなります。心臓疾患も多いのですが、その半分以上はいろいろな病気の末期にも起こる心不全です。急激に起こる心筋梗塞(しんきんこうそく)は恐ろしい病気ですが、日本での死亡率は脳卒中より少なく、発症率は3分の1くらいといわれています。
したがって、ひとつの臓器に起こる日本人の最も死亡率の高い病気は脳卒中ということになります。
また最近話題の認知症は、高齢社会を迎えてますます増える傾向を示し、日本でも近い将来、かぜ、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、胃炎などに次ぐ患者数をもつ病気になるのではないかと懸念されています。しかも、このなかで誰もがいちばんかかりたくないのが認知症かもしれません。
パーキンソン病、脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)、重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)などは神経難病(特定疾患)として分類されます。パーキンソン病なども新しい治療法がかなり進歩していますが、治りにくい病気であることには変わりありません。
これらの神経疾患のなかで近年注目を集めたのは狂牛病(きょうぎゅうびょう)とエイズ脳症、インフルエンザ脳症などでしょう。狂牛病に関しては本書のクロイツフェルト・ヤコブ病やプリオン病の項目をよく読んでください。エイズも、ほかの症状よりも認知障害だけが目立つことがあります。
外来で診る脳神経系の症状でいちばん多いのは頭痛です。文明社会に生きる人の90%以上は、生涯の間に一度くらいは病院に行ったほうがよいかなと思うほど強い頭痛を経験するという報告があります。また、神経内科に来る外来患者さんの40%は頭痛を訴えています。
この頭痛には、ただちに救急処置を要するタイプの頭痛(たとえばくも膜下出血(まくかしゅっけつ)の頭痛)と、慢性頭痛に分類される片頭痛(へんずつう)や緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)とがあります。いずれも専門医が診れば比較的診断や治療がしやすい病気で、とくに片頭痛にはトリプタン製剤と呼ばれる効果の高い薬が最近は出てきていますから、頭痛で悩んでいる人は、ぜひ頭痛の専門家である神経内科医の診察を早めに受けてください。
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