病気事典[家庭の医学]

せんようけいいじょう

線溶系異常

線溶系異常について解説します。

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線溶系異常の解説(コラム)

 外傷などの際には、血液はすみやかに凝固して止血血栓をつくりますが、同時に過剰な血栓を除去する線溶糸の反応がはたらき、正常な血流が保たれています。

 この反応には、血栓を溶かすプラスミン、プラスミンのはたらきを制御しているα2‐プラスミンインヒビター(α2‐PI)、プラスミノゲンをプラスミンに活性化する組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、tPAのはたらきを制御するプラスミノゲンアクチベーターインヒビター‐1(PAI‐1)など、さまざまな分子が関係しています。線溶系の反応が過剰に起こると、止血血栓があまりに早く溶けすぎて再出血を起こしてしまいます。

 この線溶系異常による先天性出血性疾患には、tPA過剰症、PAI‐1欠損症、α2‐PI欠損症などの報告例があります。α2‐PI欠損症については日本でも数例の報告があり、外傷後の止血困難や手術後に再出血(後出血)する特徴的な出血症状を示します。第17番常染色体上のα2‐PI遺伝子に変異が同定された症例もあります。

 線溶系異常による出血症状の治療には、抗線溶薬であるトラネキサム酸(トランサミン)投与が有効です。

 後天的な線溶系異常による出血傾向は、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)、とくに前骨髄球性(ぜんこつずいきゅうせい)白血病に伴うDICにみられます。この場合、抗線溶薬であるトランサミンの投与は微小血栓形成の憎悪(ぞうあく)に伴う臓器症状の悪化を引き起こすので、むしろ禁忌となります。

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