病気事典[家庭の医学]

ふぉん・ヴぃれぶらんどびょう

フォン・ヴィレブランド病

フォン・ヴィレブランド病について解説します。

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どんな病気か

1926年にフォン・ヴィレブランドにより初めて報告された、遺伝性の血が止まりにくい病気です。その頻度は12万人に約1人とされています。先天性出血素因(せんてんせいしゅっけつそいん)のなかで血友病(けつゆうびょう)Aに次いで多く、血友病が伴性劣性遺伝(はんせいれっせいいでん)で男児にみられるのに対し、本症は常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)(一部は劣性)遺伝で、男女両性にみられます。

原因は何か

フォン・ヴィレブランド因子の欠乏または異常による血小板の粘着障害のため、血が止まりにくくなります。Ⅰ型(量的異常)、Ⅱ型(質的異常)およびⅢ型(量的欠如)に分類され、第12番染色体上にある本因子遺伝子のさまざまな異常(遺伝子欠損、遺伝子挿入、点突然変異など)が原因であると報告されています。

症状の現れ方

病型により出血症状が異なります。Ⅰ型の出血症状は概して軽度で、Ⅱ型では重症の出血を起こすことがあります。皮膚や粘膜出血が特徴的で、なかでも鼻出血がよくみられ、皮下出血、口腔内出血、月経過多などもみられます。Ⅲ型(Ⅰ型のホモ接合体:父および母から受け継いだ遺伝子がともに同じ異常をもつこと)では血液凝固第Ⅷ因子も著しく減少するため、血友病と同様な関節出血を起こすことがあります。

一般に幼少時から出血症状は現れますが、軽症例では成人してから外傷、手術、分娩時に初めて診断されることもあります。また、年齢とともに出血症状は軽くなる傾向があります。

検査と診断

診断は、さまざまな病型があるのでやや複雑です。特徴的検査所見としては、出血時間の延長、フォン・ヴィレブランド因子の低下、第Ⅷ因子の低下などがあり、これらは変動しやすく、とくに軽症Ⅰ型では時に正常化することもあるので、数回の検査が必要です。

血中フォン・ヴィレブランド因子の濃度は血液型と密接な関連がみられ、O型では他の血液型に比べて低値です。また、一部のⅡ型亜型を除いて、血小板リストセチン凝集能の低下も特徴的検査所見のひとつです。Ⅱ型にはさらに多数の亜型があり、その区別には血漿(けっしょう)および血小板フォン・ヴィレブランド因子のマルチマー(複数の分子の結合体)解析が必要です。

治療の方法

出血症状は軽症のことが多いのですが、抜歯時、手術時には適切な治療を必要とします。妊娠時、Ⅰ型では第Ⅷ因子とともにフォン・ヴィレブランド因子の血中濃度も上昇して止血異常は正常化しますが、Ⅱ型・Ⅲ型ではほとんど正常化せず、分娩時に適切な治療が必要になります。

(1)デスモプレシン投与療法

内因性フォン・ヴィレブランド因子の放出を促し、血液製剤使用に伴う副作用がないことから、Ⅰ型には第一選択治療法として推奨されます。この治療法はⅠ型に有効ですが、ⅡB型には禁忌とされています。

(2)補充療法

フォン・ヴィレブランド因子を多く含む第Ⅷ因子製剤(コンファクトF、コンコエイトHT)の投与を行います(凝固第Ⅷ因子として10~30単位/㎏を1日 1回、静脈注射)。この治療法は全病型に有効です。

(3)その他

鼻出血、歯肉出血あるいは抜歯時の止血には、抗線溶薬(こうせんようやく)であるトラネキサム酸(トランサミン)の服用が有効です。

病気に気づいたらどうする

まず、専門医による正確な診断が必要です。よくみられる鼻出血のうち、鼻中隔粘膜からの出血は、多くは鼻の皮膚の上(外)から比較的長時間圧迫し続けることにより止血できます。しかし、出血源が特定できない出血や抜歯、手術などの処置が必要な出血の場合には、専門医に相談のうえ、前述の止血治療の併用が必要になります。

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