病気事典[家庭の医学]
いしょくどうぎゃくりゅうしょう(じーいーあーるでぃ)
胃食道逆流症(GERD)
胃食道逆流症(GERD)について解説します。
執筆者:
東海大学理事・同大医学部付属病院本部長
幕内博康
どんな病気か
胃食道逆流症とは、胃内容、すなわち酸やペプシンを含んだ胃酸や、時に胆汁酸(たんじゅうさん)や膵液(すいえき)を含んだ十二指腸内容が、胃から食道に逆流することによって発生する食道の炎症性疾患です。胸やけなどの症状が現れます。逆流性食道炎もGERDに含まれます。
原因は何か
食道と胃の境(食道下端)には下部食道括約帯(かつやくたい)(LES)があって胃内容の逆流を防止しています。LESは通常閉じていますが、嚥下(えんげ)運動の際やゲップをする時には開大します。その他、何でもない時でもLESが弛緩(しかん)することがあります。一過性LES弛緩といわれる状態があり、座位や立位でいる時にLESの弛緩が比較的長く持続します。これが頻回に起こるのがGERDの主因とされています。
そのほかのLESの機能不全としては、腹圧をかけた時のストレス性弛緩や、LES機能がまったく消失していて横になると逆流するものがあります。
LES以外の逆流防止機構としては、食道裂孔(れっこう)のピンチコック作用、ヒス角のフラップバルブ作用、腹部食道・粘膜のロゼッタ形成などがあります。
なお、GERDを起こしやすくする病態に、食道裂孔(れっこう)ヘルニアがあります。
症状の現れ方
主な症状は胸やけです。そのほか、胸痛、つかえ感などがあります。時には食物がのどまで逆流して眠れないと訴えたり、のどの痛みや慢性の咳嗽性(がいそうせい)疾患が現れることもあります。
検査と診断
QESTと呼ばれる問診表を用いた診断や、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与して症状が消失するかどうかをみるPPI試験があります。内視鏡検査で逆流性食道炎の有無をみる必要もあります(図3)。とくに発赤や白色浮腫(ふしゅ)を示す色調変化型の食道炎にも注意する必要がありますし、内視鏡的に変化を認めにくいGERD(NERD)もあります。最終的には24時間pH測定を行います。
逆流性食道炎の程度分類にはロサンゼルス分類がよく用いられています。
治療の方法
PPIや
内科的治療で効果がない場合は外科的治療を行います。腹腔鏡下ニッセン法が主流ですが、食道の蠕動(ぜんどう)の悪いものにはトペー法、ドール法も行われます。コリス法、ダイタル法も短食道症例に対して行われることがあります。
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