医療特集

食中毒

北鴻巣クリニック 院長 井上 脩士

執筆者:

最も発生しやすいのは7月から9月

食中毒とは、細菌やウイルスが付着した食品や有害・有毒物質が含まれた食品を食べることにより起こる健康被害(胃腸障害・脳神経障害など)をいいます。最も多くみられるのは、細菌性の食中毒です。この食中毒の発生は7月から9月にかけて最も多く、温度や湿度が細菌の増殖に適しているためと考えられています。しかし、住環境の変化や輸入食材増加などの影響で、冬場の発生も増えています。

原因となる細菌の種類は、以前は腸炎ビブリオ、ブドウ球菌、サルモネラ菌でしたが、最近は肉食の影響で牛・豚・鶏の腸管に由来するサルモネラ菌、ウエルシュ菌、カンピロバクターが増加しています(図参照)。

病因物質別食中毒発生状況

(厚生労働省食中毒統計調査より作成)

ここ数年増加しているのが、ノロウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎です。その多くは冬場にみられますが、一年を通して発生しています。以前はかきを含む二枚貝によるノロウイルス食中毒が多く報告されていましたが、近頃は二枚貝を食べていない例でも増加しています。細菌やウイルスに感染した人が、手をよく洗わずに調理した食品を食べることや、汚染した調理器具に触れることで感染することもあります。

よくみられる症状

多くの場合、吐き気、おう吐、下痢、腹痛などの急性の胃腸症状や発熱などがみられます。ほとんどの場合、症状は軽くてすみますが、病原性大腸菌(O-157)、ボツリヌス菌の場合は死亡することもあります。また、抵抗力の弱い子どもやお年よりで重症化することがあります。潜伏期間は数時間から数日とさまざまですが、多くは1日から2日の間に症状が現れます。

対処方法と予防のポイント

食中毒によって下痢やおう吐を繰り返したからだは、水分が不足して脱水症状を起こしやすい状態にあります。経口補水液(からだから失った水分と電解質を早く吸収できるように、ナトリウムとブトウ糖の濃度を調整した飲料。OS-1、アクアライトORS、アクアソリタなどあります)や市販のスポーツ飲料を少量ずつあげながら、症状が重くなる前に早めに主治医に診てもらいましょう。

受診する際には、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参していただくと、診断の助けになります。おう吐を繰り返す場合には、おう吐物がのどに詰まらないよう吐きやすい体位をとるように注意してあげてください。さらに、二次感染を防ぐため、汚物の処理にはゴム手袋などを使用してください。下痢止め薬の服用は、場合によって病状を悪化させることがありますので、医師の指示を仰ぎましょう。

食中毒の予防のポイントとしては、下記があげられます。 (1)手洗いを励行して細菌などをつけないこと、(2)調理器具・食器は常に清潔に取り扱うことが大事です。(3)食べ物は十分に加熱(中心部の温度が75℃で1分間以上)することで殺菌することができます。(4)冷蔵庫や冷凍庫は詰めすぎず、食品の購入は新鮮なものを消費期限の確認をして求めましょう。また、この時期、(5)調理したものは室温に放置しないで早く食べるか冷蔵庫に保管し、また食べる際は再度加熱してください。(6)睡眠不足や寝冷えなど健康管理に気をつけることも予防にとって大事なことです。

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