病気事典[家庭の医学]

しぜんききょう

自然気胸

自然気胸について解説します。

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どんな病気か

肺の一部が破れて空気がもれ、肺が虚脱(きょだつ)した病気を自然気胸といいます。

原因は何か

肺胸膜直下に存在するブレブの破裂によって起こります。ブレブとは、直径1㎝程度の異常気腔で、正常肺と異なり破裂しやすく、自然気胸の原因になります。

ブレブの破裂は、運動、怒責(どせき)、咳(せき)などで肺胞(はいほう)内圧が上昇した場合や、飛行機搭乗、ダイビングなどで大気圧が低下した場合に起こりますが、大半は安静時に発症します。

発生率は、人口10万比40~50人といわれています。好発年齢は10~20代であり、性別では圧倒的に男性に多く、背が高く、やせた人に多く発症し、患者さんの約70%は喫煙者であることが特徴です。

症状の現れ方

突然の胸痛、乾いた咳、呼吸困難が現れます。これらの症状は安静にしていると多くは軽快してきます。しかし、高度な気胸や緊張性気胸(きんちょうせいききょう)(胸腔内にもれた空気が逃げ場を失い、心臓や反対側の肺を圧迫する気胸)では、チアノーゼ、不整脈、血圧低下なども来し、危険な状態に陥ることもあります。

検査と診断

前記の症状で自然気胸の疑いがもたれ、胸部X線像で肺の虚脱が確認されれば(図43)、診断が確定されます。

一般的に胸部X線は、大きく息を吸い込んで(最大吸気位で)撮影しますが、軽度の気胸の場合は、大きく息を吐いて(最大呼気位で)撮影すると、肺の虚脱が増強し、診断が容易になる場合があります。

治療の方法

肺の虚脱が軽度、すなわち虚脱した肺の頂上(肺尖部(はいせんぶ))が鎖骨(さこつ)の上にある場合には、安静により様子をみます。

安静にしても改善しない場合や肺の虚脱が高度であれば、持続脱気が行われます。持続脱気とは肋骨と肋骨の間から細いチューブを胸腔内に挿入し、器械で肺からもれた空気を体外に引き出す方法です。

肺が元どおりに膨張(ぼうちょう)すれば、空気のもれがないことを確認して、チューブを抜き去ります。

この時再発防止のため、テトラサイクリン、ピシバニールという薬剤や、患者さんの血液を胸腔内に注入することもあります。

しかし、持続脱気を行っても肺の再膨張が得られない場合や、再発を3回以上繰り返す場合には、手術が行われます。手術は、腋窩小開胸法(えきかしょうかいきょうほう)や胸腔鏡によって、ブレブの切除や縫縮(ほうしゅく)が行われます。

手術を行わない場合の自然気胸の再発率は、20~30%といわれています。手術後の再発率は1~2%ですので、最初から、体を傷つけることの少ない胸腔鏡による治療をすすめる医師もいます。

病気に気づいたらどうする

背が高く、やせた若い喫煙者の男性が、突然の胸痛、乾いた咳、呼吸困難を感じたら、まず自然気胸を疑います。基礎疾患のある続発性気胸(コラム)と異なり、予後は良好ですので、あわてずに病院を受診してください。しかし、呼吸困難が次第に増強する場合は、より高度な気胸や緊張性気胸を来している可能性があるので、早めの受診が必要です。

受診する科は内科でも外科でもかまいません。

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