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身近に迫る糖尿病 - 治療と日常生活で気を付けること 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


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医療特集

身近に迫る糖尿病 - 治療と日常生活で気を付けること

糖尿病になってしまった場合、どのような治療を行うのでしょうか。また日常生活で気を付けていかなければならないことについても伺いました。

NTT東日本関東病院 糖尿病・内分泌内科 部長 林 道夫

お話を伺った先生:

糖尿病治療の進め方

林先生によると、治療のおおまかな流れは以下のようになります。

  • まず患者さんご自身によって、食事療法と運動療法に取り組んでいただきます。
  • HbA1c7.0%未満の状態を目指し、必要に応じて内服薬を使います。
  • それでも高血糖が続くときには、注射薬(インスリン)を使います。

治療の目標

林先生はまず、『HbA1c7.0%未満をキープすること』を治療の目標とするそうです。

「大半の人は、運動療法と食事療法に取り組んでもらえれば7.0%未満を達成できます。しかし、いくらがんばっても7.0%未満に至らない人もいます。そのような人には、薬を使って7.0%未満を達成してもらいます」(林先生)

内服薬による糖尿病の治療

薬には飲み薬の内服薬と、注射薬のインスリンがありますが、まずはおもに内服薬を使って『HbA1c7.0%未満をキープ』を目指すといいます。ここで疑問に感じるのは、なぜ目標値がHbA1c診断基準値の6.5%未満ではなく7.0%未満なのかということです。

「それは、HbA1c7.0%を超えたあたりから、先ほど『し・め・じ』といいましたが、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症という糖尿病の3大合併症が現れやすくなるからです」と林先生は説明します。

血糖値は低い方がよいのか

HbA1c6.5%未満を目標とすれば、さらに合併症が起こりにくく糖尿病の治癒につながりそうですが、林先生はHbA1cの値を無理に下げるのはかえってよくない場合があると、血糖管理の難しさを指摘します。血糖値は食事の前に低く食事の後に高くなるという、1日の中で山と谷を繰り返しています。そのような変動する日々の血糖値の1~2カ月間の平均がHbA1cです。

「薬を使ってHbA1cを下げてしまうと、食事前の血糖値の低い時間帯が生じます。高血糖状態は防げていますが、低い血糖も決してよい状態ではありません」と林先生は話します。薬を使って低血糖のリスクをおかしてでも6.5%未満を目指す治療は、現在ではあまり行われていないそうです。

内服薬は患者さんに合わせて使用

「今は低血糖になりにくい内服薬もでていますから、食事療法と運動療法を続けながらそういった内服薬を使い、HbA1c7.0%未満をキープすることを目指します。しかし、どうしても下がらないときには、低血糖を起こす可能性のある内服薬を少し併用することもあります」(林先生)

「内服薬には、高齢者には向いていない薬、腎臓が悪い人には使わない薬、また太った人向きの薬、やせた人には使わないほうがよい薬など様々です。私たちは患者さんそれぞれに合わせて内服薬を使い分けるようにしています」

表1に糖尿病で処方される主な内服薬の種類を示します。

表1 糖尿病で処方される主な内服薬の種類
  作用など 特徴
スルホニル尿素(SU)薬 膵臓からのインスリン分泌を促進させる。 種類によって作用時間は異なる。
速効型インスリン分泌促進薬 膵臓からインスリンの分泌を促進させる。 スルホニル尿素薬よりも短時間で効き、作用時間が短い。
α-グルコシダーゼ阻害薬 腸からのブドウ糖の吸収を抑える。 食事直前に服用する。
ビグアナイド薬 肝臓からのブドウ糖の放出量を抑える。 低血糖が起こりにくい。
インスリンの分泌量には影響しない。
チアゾリジン系薬 筋肉や肝臓の細胞がインスリンを利用する能力を高める。 インスリンの分泌量には影響しない。
DPP-4阻害薬 インスリンの分泌を促すホルモンを分解する酵素の働きを抑える。 低血糖が起こりにくい。
SGLT2阻害薬 尿から糖を出して血糖を下げる。 低血糖が起こりにくい。
腎臓の悪い人、妊娠時には使えない。
配合剤 2種類以上の薬を混合した錠剤。 飲む錠剤の量が減るので、飲み忘れが減る。

インスリン注射の使い方

インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖(血糖)を細胞に取り込んでエネルギーとして利用したり、肝臓で中性脂肪として蓄えたりするときなどに重要な役割を担っています。正常であれば食事の後など血糖値が増えたときに血液中に分泌され、結果として血糖値が低下します。

インスリンの使い分け

「膵臓でつくられているインスリンには、2種類あります。ひとつは、食事の後の血糖が高いときに分泌され、食前には下がるインスリン。もうひとつは、食事に関係なく常に少量出ているインスリンです。同じインスリンですが、出方が違います」と林先生は説明します。

2型糖尿病の患者さんが食事療法と運動療法、内服薬でも血糖値が下がらないときなどには、内服薬からインスリンの自己注射に切り替えます。注射を打つ部位は、一般にはおなかです。内服薬とインスリンを併用することもあります。

注射薬のインスリンも、食事後にすぐ効くタイプと24時間かけてゆっくり効くタイプがあります。毎日の食事に合わせてインスリンを打つなら、まず24時間タイプを打ち、次に速く効くタイプを食事ごとに1日3回、打つことになります。

「仕事や日常生活の合間に1日4回も注射することは、実際には困難な場合もあります。患者さんと相談しながら、1日の注射の回数やインスリンの種類を加減します」。林先生はインスリンの効き方や、患者さんのライフスタイルによって使い分けているそうです。

低血糖に注意

インスリンを使っているときに、もっとも注意しなければならないのが、低血糖です。インスリンのほか、内服薬でもインスリンの分泌を促すスルホニル尿素薬(SU)が起こしやすいといいます。

「薬を使ったにもかかわらず食事をとらなかったり、誤って2回注射したりしたときに起こるのですが、意外に多く見られます」と林先生は注意を促します。低血糖になると、動悸、発汗、手の震えなどが現れ、意識がなくなったり、死に至る場合もあるそうです。

「とくに高齢者は、ご自身が低血糖の徴候に気付きにくいので周囲の人が注意して見守ってあげる必要があります。また、認知症のある高齢者がたびたび低血糖を起こすと、認知症が進みやすいといわれています」

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病の場合には、食事療法とともにインスリンが使われます。内服薬では胎児への影響が心配されるからです。肥満や高齢出産の人に多い傾向があるそうです。妊娠糖尿病を経験した女性は、将来糖尿病にかかりやすいので、定期的な検査が必要です。

妊娠糖尿病(病気事典)を読む

改善には本人の意識の切り替えが大事

「糖尿病は入院して治る病気ではありません。糖尿病は先の長い病気です。ご自身の日常生活のありようによって、良くもなり悪くもなる病気なのです」と林先生は話します。

治療のための入院とは?

糖尿病と診断されると、病院によっては教育入院を勧められることがあります。教育入院とは、一定期間入院して糖尿病の知識や、食事療法、運動療法などの基本的な生活方針を学ぶための入院で、生活を見直すきっかけづくりでもあります。

「当院では、忙しい人のために2泊3日の入院を勧めています。その3日間でこれまでの習慣や態度を軌道修正するきっかけになることが、入院の一番のメリットです」。入院では、医師ばかりでなく、看護師や栄養士、薬剤師の話を集中して聞けることが大きな収穫となりそうです。意識の切り替えが目的ですので、外来で糖尿病教室に参加するなどしてもよいでしょう。

「外来でも入院でも、生活改善のためのご本人の意識改革は欠かせません。糖尿病は、薬を飲んで、それだけで治る病気ではありません」と林先生は、患者さんご自身が積極的に生活改善に取り組むことの重要性を強調します。

表2 教育入院プログラムの例(NTT東日本関東病院の場合)
  午前 午後 夕方
1日目 オリエンテーション 講義
 糖尿病等とは
 食事療法
ビデオ
 糖尿病とは
 糖尿病足病変
 運動療法とは
2日目 講義
 フットケア
講義
 糖尿病の検査
 運動療法
ビデオ
 糖尿病合併症
 血管を守ろう
 糖尿病グラフティ
3日目 講義
 日常生活の注意点
 糖尿病の薬
3日間のまとめ(記述)  

食事療法のコツ

腹八分目、野菜を多めに

食事の基本はカロリーのとりすぎを避けることです。

「腹八分目、脂ものは控えめ、野菜は多め、間食はしない」。林先生が患者さんに最低限守ってもらいたいことです。「腹八分目は、今食べた量の4分の1ならまだ食べられる、というところでやめることです」。

「野菜を多めに、というのはおもに食物繊維をとりたいからです。野菜ははじめに食べたほうが同じ量を食べても血糖が上がりにくくなります。ただし、イモ、カボチャ、トウモロコシは穀類ですから、炭水化物が多く、これらは野菜ではありません」。『食物交換表』(糖尿病食事療法のための食品交換表、日本糖尿病学会編)には、穀類と豆類は、野菜とは区別されて記載されています。イモやカボチャなどは、狭い意味では野菜ではないのです。

「脂ものは、どんな脂であってもカロリーは高いので、脂のとりすぎは確実に太ります。コンビニ、外食産業の食品には脂が多いので、控えめにしましょう」と林先生は注意を促しています。また、間食を控えることは、血糖コントロールによい結果を生むそうです。

身体によかれと思いがちなこと

私たちが普段、見落としがちなことがあります。

「自分では良かれと思っていろいろなサプリメントをとっているという方がいらっしゃいます。錠剤に含まれている糖が原因で血糖値が上がり、サプリメントをやめていただくと下がったということは少なくありません」(林先生)

また、果物は健康にいいというイメージですが、果物の食べすぎも血糖が上がる原因のひとつです。

「1日に自分の握りこぶしの大きさが、摂取量の目安です。ミカンなら2個までとされていますが、血糖が上がりやすい人には1個までとお伝えしています。それから果物を食べるときは、食事の時に食べるようにしてください」

食事のとき(または食後すぐ)に食べるほうが血糖が上がりにくいそうです。たとえば3時のおやつのように、食事と食事の間に食べることはよくないそうです。

ペットボトル症候群にご注意

夏場に、糖質を含む炭酸飲料などを飲みすぎたことが原因で、高血糖になって来院する人がいるといいます。

「ペットボトル症候群といいますが、比較的若い人によくみられます。この場合は、薬も使わなくても原因を取り除くだけで血糖は下がることがほとんどです」

運動のコツ

運動は大きく分けて、有酸素運動と無酸素運動があります。ウォーキングは有酸素運動のひとつです。一方の無酸素運動の代表は、筋力トレーニングです。

「最近はどちらも大事で、平地を歩くだけではむしろ弱いといわれています。筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動は、糖尿病にも重要ですが、ロコモティブシンドロームといって、足腰が弱って歩けなくなるのを防ぐにも効果的です」(林先生)

「週に3回トレーニングジムに通っているから、運動は十分やっていると思っている人がいます。ところが、普段の通勤では歩かない、デスクワークで座ってばかり。これでは運動しているとはいえません。看護師を対象にしたアメリカの看護師健康調査(Nurses' Health Research)では、テレビを見る時間の長い人ほど病気にかかりやすいことがわかりました。これは安静時間の長い人ほど、病気のリスクが高くなるということです」

普段から立ち歩きを増やし、エスカレーターより階段を使い、電車では座らないなどの習慣こそが、糖尿病予防に限らず病気予防全般に重要といえそうです。

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林 道夫先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 糖尿病・内分泌内科 部長 林 道夫

NTT東日本関東病院 糖尿病・内分泌内科 部長

取得専門医・認定医

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医・指導医
  • 日本糖尿病学会認定専門医・指導医

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