病気事典[家庭の医学]

いんすりんていこうせいとせいかつしゅうかんびょう

インスリン抵抗性と生活習慣病

インスリン抵抗性と生活習慣病について解説します。

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解説(概論)

インスリン抵抗性とはインスリン分泌不全とともに、2型糖尿病の成因のひとつです。インスリン抵抗性は骨格筋や脂肪組織でインスリンの作用が現れにくくなるため、骨格筋では糖の利用が十分に行われなくなります。これに伴い血糖値が上昇し、この耐糖能(たいとうのう)の異常を正常化するため、生体は膵臓(すいぞう)のβ(ベータ)細胞から過剰なインスリンを分泌し、血糖を低下させようとします。

インスリンは、糖代謝(とうたいしゃ)のみならず、脂質代謝(ししつたいしゃ)にも重要なはたらきをしています(図1 )。すなわち、インスリンは脂肪の分解を抑制し、脂肪の蓄積にはたらきます。食事が狩猟に依存していた時代には、インスリンをより多く分泌して、たまに得られた食事を効率よく脂肪として蓄積した人ほど、すなわち肥満になりやすい人ほど、次に食事が得られるまで脂肪を分解してエネルギーとして利用し、また肥満者ほど寒冷にも耐えられ、生き延びるチャンスが多かったといえます。したがって、人類はインスリン抵抗性をもつように進化してきたといえます(倹約遺伝子(けんやくいでんし)説とも呼ばれる)。

ところが、飢餓(きが)や寒冷の時代には、生存に有利にはたらいたインスリン抵抗性は、「飽食の時代」「車社会」といわれる現代社会では、過食と運動不足により、糖尿病をはじめとするさまざまな代謝異常を引き起こしているといえます。

インスリン抵抗性によるインスリンの過剰な分泌は、血圧の上昇や脂質代謝の異常も引き起こします。2型糖尿病・肥満・高血圧・脂質異常症などの代表的な生活習慣病は、インスリン抵抗性を基にして相互に密接に関連しています。インスリン抵抗性を来す病因として、肥満、とりわけ内臓脂肪の意義を強調する見方もあり、内臓脂肪(ないぞうしぼう)症候群とも呼ばれています。

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