病気事典[家庭の医学]

とうにょうびょうとかんせんしょう

糖尿病と感染症

糖尿病と感染症について解説します。

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感染症にかかりやすい

感染症は、病原体すなわち細菌、ウイルスあるいはカビ(真菌(しんきん))によって起こる病気の総称です。血糖コントロールが不良な糖尿病の患者さんは、免疫力が低下するので、さまざまな感染症にかかりやすく、非糖尿病者ではあまりみられないような感染力の弱い病原体による感染症にかかることもあります。

一般にみられる肺炎膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)、胆嚢炎(たんのうえん)、皮膚や軟部組織の感染なども非糖尿病者に比べてかかりやすく、また、重症になったり治りにくくなることが多いので注意が必要です。また、感染症は血糖コントロールを著しく悪化させるので、糖尿病自体の治療も強化する必要があります。

糖尿病に特徴的な感染症

糖尿病では肺炎や尿路感染症、胆嚢炎などにかかりやすいことはすでに述べましたが、皮膚が化膿しやすく、おでき(せつ(せつ)や(よう))ができやすいこともよく知られています。より重い蜂巣炎(ほうそうえん)(フレグモーネと呼ばれる皮膚の深部の化膿症)もしばしばみられます。感染が骨にまで達して骨髄炎(こつずいえん)を起こすこともあります。また、カンジダ(カビの一種)腟炎なども糖尿病の患者さんに多いといわれています。

これらの一般的にもみられる感染症に加えて、悪性外耳道炎(あくせいがいじどうえん)(耳の痛み、耳からの分泌物に始まり、次第に顔面の神経麻痺や髄膜炎(ずいまくえん)を起こす)やフルニエール壊疽(えそ)(陰茎(いんけい)、陰嚢(いんのう)の激痛に始まり、赤くはれてさらに組織が崩れてくる)、壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)(下肢に多く、浮腫、熱感、圧痛、全身の発熱から水疱(すいほう)、壊疽(えそ)、潰瘍化(かいようか)、感覚麻痺を伴った皮膚の変色に進行する)などの重篤な感染症を起こすことも極めてまれながらあります。

ムコール症というケカビ(カビの一種)の感染も、今日では糖尿病の患者さんにしかみられなくなった感染症です。血液の混じった鼻汁で始まり、鼻粘膜や硬口蓋(こうこうがい)(口のなかの天井部分の固いところ)に黒い痂皮(かひ)(かさぶた)を伴う壊死が起こり、次第に頭痛、顔面痛、眼球突出、失明、嗜眠(しみん)傾向(ねむけ、うとうと状態)などに進行します。

感染症による糖尿病の悪化

感染症はたとえかぜであっても血糖のコントロールを悪化させます。一般に感染症にかかると食欲が低下して摂食量が減りますが、そのような場合でも糖尿病の治療を中止してはいけません。逆に、インスリン療法の開始や、インスリン治療中の場合は、一般にインスリンの増量が必要になるので、医師の適切な指導が必要です。

治療の方法

前述したように、糖尿病では感染症は重症化するので、早期から適切な抗生剤による強力な治療が必要です。皮膚など局所の感染には、早くから積極的に切開排膿や病巣の摘出などの外科的処置も施さなければなりません。

病気に気づいたらどうする

早期診断、早期治療が重要なので、異常に気づいたらできるだけ早く、医師の診察を受けることが必要です。

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