病気事典[家庭の医学]
しぼうしゅ
脂肪腫
脂肪腫について解説します。
執筆者:
杏林大学医学部整形外科学准教授 森井健司
どんな病気か
脂肪組織からなる良性腫瘍で、日常みる機会の非常に多い疾患です。脂肪腫は薄い膜におおわれており、瘤(こぶ)そのものは皮下脂肪と同じような黄色い色をしています(図50)。顕微鏡で組織を検査した場合、正常な脂肪組織と同じようにみえます。40~50代の女性に多いとされています。
背中や肩のまわり、おしりのまわりの皮下組織によく発生します。筋肉のなかに発生する場合は大腿部への発生が多くみられます。大部分の症例は単発性ですが、一人の患者さんにたくさんの脂肪腫が発生することもあります。
症状の現れ方
痛みのない瘤として意識されます。皮膚と筋肉の間(皮下組織)に見つかることが多いのですが、これ以外に筋肉のなか、筋肉と筋肉の間、骨の表面や骨のなかなど比較的体の深い場所にも発生します。痛みや運動障害などの原因となることはまれです。
通常、大きさは長期間にわたって変わりませんが、徐々に大きくなることがあります。良性腫瘍であるにもかかわらず、5㎝以上の比較的大きなものも数多くみられます。
検査と診断
X線検査では、瘤のある部分が薄く透けて写ります。CTやMRIなど詳しい画像検査を行うと、皮下の脂肪組織と同じ信号を発する腫瘍が認められます(図51)。大きなものや急に大きくなるものは、悪性腫瘍に分類される脂肪肉腫と区別する必要があります。
ある程度は画像診断などでも予想がつきますが、最終的には顕微鏡で組織を検査することなどで決定します。
治療の方法
比較的小さく、痛みなどの症状がない場合は経過をみるだけでよいことが大半です。体の比較的目立つ部分に発生した場合は手術で取り除きます。手足にできた小さなものは、多くは日帰りの手術が可能です。
比較的大きい場合(5㎝以上)や短期間に成長する場合は、悪性腫瘍である脂肪肉腫との鑑別を目的として組織を採取する手術を行います。悪性であるとわかった場合は治療法が異なりますので注意が必要です。
病気に気づいたらどうする
まず、近所の整形外科医に相談してみてください。体に発生した瘤は、通常の診察だけでは病名の決定ができません。必要があればX線、MRIなどの検査を行います。典型的な脂肪腫であればこの時点で診断がつきます。また、もし瘤が脂肪でない場合もMRIでわかります。
悪性の疑いのある場合は、整形外科分野の腫瘍を専門とする医師のいる施設(地域のがんセンターや大学病院)に紹介してもらいましょう。
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