病気事典[家庭の医学]
腰が痛い(腰痛)
執筆者: 昭和大学横浜市北部病院院長 田口 進
腰痛、関節痛
人の体は、200本を超える骨によって形づくられています。骨と骨の連結部分を関節といい、骨と関節、それを動かす筋肉や腱、さらに運動神経や知覚神経により、私たちの体は自由に動くことができるようになっています。
したがって、それらのどれかひとつにでも障害が起こると、さまざまな痛みが生じてきます。ここでは、そのなかの「腰痛」と「関節痛」についてみていきます。
腰痛から考えられる主な病気
主な症状と、付随する症状から、疑われる病気を調べることができます。
病気名を選択すると、その病気の解説へ遷移します。
症状 | 疑われる病気名 | ||
---|---|---|---|
腰痛に伴って下肢の痛み・しびれ、下肢の筋力低下、排泄障害 | 腰椎椎間板ヘルニア | ||
臀部や大腿後面の痛み、腰曲がりや体が側方に曲がる | 変形性腰椎症 | ||
長時間の立ち仕事や同じ姿勢を続けたり、体を後ろに反らせると痛みが増強 | 腰椎分離・すべり症 | ||
間欠性跛行、前かがみになると症状がなくなる、連続歩行距離・時間の短縮 | 腰部脊柱管狭窄症 | ||
ただ腰が痛い、痛みが強くなったり弱くなったりを繰り返す | 腰痛症 | ||
臀部痛、深呼吸時の胸部痛、股関節・膝関節・アキレス腱部の痛み | 強直性脊椎炎 | ||
大腿背面から下腿、足背部などの痛み・しびれ | 座骨神経痛 | ||
腰背部痛 | 背骨が曲がってきた | 骨粗鬆症 | |
骨盤・大腿骨・下腿骨の圧痛・叩打痛、あひる歩行 | 骨軟化症 | ||
発熱、圧痛・叩打痛 | 高熱(急性)、微熱(慢性) | 化膿性脊椎炎 | |
微熱 | 脊椎カリエス | ||
腰背部痛・側腹部痛 | 血尿、頻尿、残尿感、排尿困難 | 発熱 | 急性腎盂腎炎 |
吐き気、便秘 | 遊走腎 | ||
下腹部痛、血尿 | 尿管結石 、 水尿管症 | ||
下腹部の腫瘤感・膨満感・痛み、月経異常、動悸、息切れ | 子宮筋腫 | ||
不正性器出血、おりものの増加、下腹部痛、血尿 | 子宮頸がん | ||
肩こり、憂うつ、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗、動悸、めまい | 更年期障害 | ||
腹部に拍動性の腫瘤、腹痛 | 腹部大動脈瘤 | ||
胸・背中・骨の痛み、全身倦怠感、貧血、むくみ、骨折、体重減少 | 多発性骨髄腫 |
- [ご利用上の注意]
- 一般的な医学知識の情報を提供するもので、皆様の症状に関する個別の診断を行うものではありません。気になる症状のある方は、医療機関にご相談ください。
腰痛を起こす病気
重い上半身を一手に支えている腰……腰痛は人類が2本の足で立って以来の宿命的な症状といえます。整形外科系の病気はもちろん、それ以外の病気でも起こり、原因となる病気は多岐にわたるため、単に腰部の痛みだけでなく、随伴する症状がないかどうかにも十分に注意を払う必要があります。
さまざまな検査をしても、とくに原因となる器質的病変が見当たらず、下肢痛などの神経症状を伴わない腰痛を腰痛症と呼んでいます。一般に「ぎっくり腰」と呼ばれる急性腰痛症と、痛みが強くなったり軽くなったりを繰り返す慢性腰痛症があります。
急性腰痛症は、何か腰を痛くするきっかけがあって、あるいはとくに理由もなく突然激しい腰痛が出現します。痛み以外に症状がないのが普通で、数日以内に痛みがとれるならそれほど心配いりませんが、持続するなら腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアなども考えられますので整形外科へ受診してください。
近年増えている骨粗鬆症(こっそしょうしょう)でも、腰痛が起こることがあります。閉経後の女性に多い病気で、最大の原因であるカルシウム不足への注意が叫ばれています。
整形外科系以外の病気では、まず腰部近辺にある臓器の病気があげられます。急性腎盂(じんう)腎炎、遊走腎など腎臓の病気、子宮筋腫、子宮頸(けい)がんなど婦人科の病気では、腰痛は重要な症状のひとつです。