病気事典[家庭の医学]

ふぉるくまんこうしゅく(ぜんわんぶのこんぱーとめんとしょうこうぐん)

フォルクマン拘縮(前腕部のコンパートメント症候群)

フォルクマン拘縮(前腕部のコンパートメント症候群)について解説します。

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どんな病気か

四肢の筋肉、血管、神経組織は、筋膜や骨間膜などによって囲まれており、この閉鎖空間をコンパートメントといいます。外傷などによりコンパートメント内の組織圧が上昇して循環不全を生じ、筋肉、神経組織の壊死(えし)を来してくる病気をコンパートメント症候群といいます。これが前腕屈側に生じたものをフォルクマン拘縮と呼びます。

コンパートメント症候群のなかでフォルクマン拘縮は最も頻度が高く、上腕から前腕にかけての外傷や外部からの圧迫などにより生じた筋肉内微小循環障害のため、前腕の筋群、とくに屈筋群が非可逆性壊死に陥り、その末梢(まっしょう)に拘縮や麻痺を生じます。

原因は何か

前腕屈側の筋肉、血管、神経組織は強靱(きょうじん)な筋膜や骨膜などで囲まれており、この空間をボラールコンパートメントといいます。上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)などによって血管が損傷したり、圧迫を受けると、ボラールコンパートメント内の筋肉組織で阻血(そけつ)(血液が足りなくなる)が起こって筋肉内に浮腫(ふしゅ)(むくみ)が生じます。さらに静脈の閉鎖が加わって筋肉内圧を高め、さらなる循環障害を来すという悪循環を繰り返し、筋肉への血液供給を極端に減少させることが原因で起こります。

症状の現れ方

受傷後数時間後から発症する前腕部の腫脹(しゅちょう)と疼痛(とうつう)、指を他動的に伸ばそうとしても痛みのためにできない、指がしびれるといった症状が外固定や牽引(けんいん)をしても改善せず、進行性に悪化していきます。とくに疼痛、腫脹、チアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になること)、脈拍欠如、運動麻痺、異常知覚といった血管閉塞の明瞭な6症状が出現した時は手遅れの場合が多くなります。

しかし、脈拍は欠損しない不完全な血管閉塞の場合が多いです。完全にフォルクマン拘縮ができあがってしまうと不可逆性の変化となり、手関節、指関節は屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)して鷲爪様変形になり、手指の機能は完全に失われます(図8)。

検査と診断

受傷後、血管の不完全閉鎖の場合には脈拍が触れ、末梢の循環もよいことが多いので、指を伸ばすと痛みが出るといった所見は診断のために重要です。

肘や前腕の外傷では、常にフォルクマン拘縮を念頭に置いて、血管閉塞の6症状に注意して診断を行います。とくにX線写真上、高度な転位を認める上腕骨顆上骨折の場合で、同部の腫脹が強い時には見過ごさないことが大切です。補助診断法として筋膜内に針を刺入し、筋膜内圧を測定する方法があります。

治療の方法

動脈閉鎖後、フォルクマン拘縮が生じるまでの時間は6~8時間といわれているので、適切な初期対応が重要です。まずは、可能な限り骨折の整復やギプスで圧迫など阻血(そけつ)の原因を除去します。

改善がなければ緊急手術で筋膜切開を行い、内圧を減少させます。陳旧(ちんきゅう)例(古い病巣)では線維化した筋肉を切除し、再建手術が必要になりますが、完全回復は期待できません。

病気に気づいたらどうする

早急に整形外科を受診しましょう。

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