病気事典[家庭の医学]
こううつやくのふくさよう
抗うつ薬の副作用
抗うつ薬の副作用について解説します。
執筆者:
メンタルクリニックおぎくぼ院長/東京医科歯科大学名誉教授
融 道男
抗うつ薬の副作用の解説(コラム)
抗うつ薬として初めに使われたのは三環系(さんかんけい)抗うつ薬(三環系)で、これは脳のモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン)を増加させます。普通は、モノアミンが脳のシナプスで放出されたあとにシナプスに再び取り込まれますが、この抗うつ薬はモノアミンの取り込みを妨害しますから、放出されて残ったセロトニン分子がシナプスの間隙に増え、セロトニンの作用が強められて、うつ病症状が改善します。
1981年ころになって、四環系(よんかんけい)抗うつ薬(四環系)が使われるようになり、ノルアドレナリンが作用するようになりました。1999年には、「セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」が、さらに2000年に「セロトニン‐ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」が用いられるようになり、うつ病に対して脳のモノアミンの微調整ができるようになりました。
(1)抗コリン作用
三環系は、アセチルコリン受容体を妨げて、口や眼の粘膜が乾燥し、眼がかすんだり、便秘、尿閉(にょうへい)、心臓の異常を生じます。四環系やSSRIへ替えるのがよいでしょう(四環系、SSRI、SNRIでは副作用は減少)。
(2)セロトニン症候群
一般的にまれですが、発症に至る時は24時間内に70%の人に現れます。意識障害(失見当識(しつけんとうしき)、錯乱)、不安、焦燥、不眠、気分高揚などがみられ、腱反射亢進(けんはんしゃこうしん)、ミオクローヌス、筋強剛(きんきょうごう)、振戦(しんせん)、失調、けいれんなども生じ、さらに発熱、下痢、発汗、頻脈、血圧不安定、流涙(りゅうるい)、尿閉などが出現することもあります。
SSRI、SNRI、三環系でも報告があります。治療は、シプロヘプタジン(ペリアクチン)などを使います。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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