病気事典[家庭の医学]
こうふあんやくのふくさよう
抗不安薬の副作用
抗不安薬の副作用について解説します。
執筆者:
メンタルクリニックおぎくぼ院長/東京医科歯科大学名誉教授
融 道男
抗不安薬の副作用の解説(コラム)
抗不安薬と睡眠薬(睡眠導入剤)は、ベンゾジアゼピン(BZ)系薬物でほぼ同じ機序です。BZ系薬物は、BZ受容体に結合しますが、GABA(ギャバ)受容体とBZ結合とで複合体を作っています。
たとえば、抗不安薬のジアゼパムを飲んで、脳内のギャバ受容体の壁にあるBZ受容体に結合しますと、大きなギャバ受容体の全構造が精巧に影響を受けて、ギャバの作用を強めます。その結果、ジアゼパムの小さい刺激でギャバ受容体が活性化され、水路チャネルが口をあけて塩素イオンが細胞内へ流れ込みます。塩素イオンが神経細胞膜に作用して、ギャバ受容体に特有な抑制的信号を発します。ここで、患者さんの不安が抑制されるのです。
BZ系薬物は、鎮静催眠(ちんせいさいみん)・筋弛緩(きんしかん)・抗けいれん作用をもつので、有害な副作用を生じます。
(1)鎮静作用
ねむけ、ふらつき、めまい、注意・集中低下、倦怠感(けんたいかん)、脱力感などがあり、自動車の運転や機械の操作にミスが生じることがあるため、慎重な服用が望まれます。
(2)アルコール併飲
アルコールと一緒に飲むと作用が強まりすぎて、意識が薄らいで、判断力が鈍くなり、物忘れが起こります。さらに、怒りや敵意の感情をもつこともあります。アルコールとBZ系薬物は共通受容体をもつので、健忘が進むことがあります。BZ系薬物の常用量の服用でも、依存するようになると、中止した時に離脱症状(コラム)を生じます。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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