病気事典[家庭の医学]

動悸がする

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動悸

動悸とは、普段は意識しない心臓の拍動を不快なものとして感じる症状です。怖い映画を見たり、憧れの人に出会ったり、運動したりなどしてドキドキ……などは日常茶飯のことですから経験上危険のないことはわかっていますが、時に重大な病気による動悸のこともあります。動悸が起こったら、脈拍に異常はないか、随伴する症状はないかなどに気をつけて、たとえ激しい動悸ではなくても一度、診察を受けましょう。

動悸から考えられる主な病気

主な症状と、付随する症状から、疑われる病気を調べることができます。
病気名を選択すると、その病気の解説へ遷移します。

心臓が原因

症状 疑われる病気名
呼吸困難(半坐位で楽になり、あおむけで悪化)、咳、泡のような痰 急性心不全 心臓弁膜症
発熱などかぜ様症状、下痢など消化器症状のあと、動悸、胸痛 心筋炎
運動した時などに動悸・息切れ 胸痛、失神発作 肥大型心筋症
夜間発作性呼吸困難症、むくみ 拡張型心筋症
不整脈 脈が速くなったのち遅くなる、動悸ののちめまい 徐脈頻脈症候群
脈が遅くなる、息切れ、むくみ 房室ブロック
脈が抜けたりスキップする、胸のもやもや感 期外収縮
急に脈が速くなって動悸が起こり、急に治まる 発作性上室性頻拍
脈のリズムが不整、胸が踊る感じ・痛み 心房細動 心房粗動

心臓以外

症状 疑われる病気名
息切れ、疲れやすい、全身倦怠感、頭重感、顔面蒼白 鉄欠乏性貧血
右記の貧血症状、皮下出血など出血傾向 慢性骨髄性白血病
発汗過多 空腹感、ふるえ、集中力散漫 体重減少、眼球突出 甲状腺機能亢進症
意識の混乱、発語困難 低血糖症
高血圧、頭痛、体重減少、便秘、胸痛、視力障害 褐色細胞腫
呼吸困難 咳、痰 COPD
不安感 頻脈、めまい、ふるえ、冷や汗、吐き気 パニック障害
しびれ感、興奮、意識混濁 過換気症候群
胸痛、めまい 心臓神経症
その他 発熱、 起立性低血圧症 更年期障害 全般性不安障害 など
[ご利用上の注意]
一般的な医学知識の情報を提供するもので、皆様の症状に関する個別の診断を行うものではありません。気になる症状のある方は、医療機関にご相談ください。

心臓が原因で起こる動悸

動悸が発生する病気には、大別して
(1)心臓自体の病気によるもの
(2)心臓以外の病気によるもの
(3)心因性のもの
の3つがあります。

まず(1)から注意すべき主な病気をみていきます。

心筋炎

心臓の筋肉がウイルスや細菌などに感染して起こる炎症です。初めは発熱、咳などのかぜ様症状や下痢、腹痛など消化器症状で始まり、引き続いて動悸や胸部不快感、胸痛などが現れます。悪化すると呼吸困難、意識障害、不整脈などが起こり、重症例では突然死することもあります。

心臓弁膜症

心臓にある弁(僧帽弁(そうぼうべん)、大動脈弁など)が故障して、その開閉がスムーズにいかなくなり、血液の循環が悪くなって発症する病気です。初期では無症状ですが、次第に階段を昇るなどすると動悸、息切れが起こり、進行すると少し体を動かすだけでも呼吸困難やチアノーゼ(唇や皮膚などが紫色になる)が現れてきます。

不整脈

心臓の拍動、すなわち脈の数やリズムが乱れた状態です。不整脈があると多くの場合、動悸が起こってきます。不整脈は、とくに原因がなくても、また精神的なショックや過労、睡眠不足などでもしばしば現れ、多くは心配することはありません。しかし、心筋梗塞(こうそく)などの危険な病気によって起こることもあるため、不整脈を感じたら一度受診するようにしてください。

・脈が遅い
脈拍数は、普通1分間に60~80回くらいですが、かなり幅があります。これより脈が遅いことを徐脈(じょみゃく)といい、房室ブロックなどで起こります。軽症の場合はとくに問題ありませんが、中等度以上になると、動悸、めまいを伴い、失神することもあります。

・脈が速い
脈が速いことを頻脈(ひんみゃく)といい、運動したり、緊張したり、また妊娠中などでも起こります。発作性上室性頻拍は急に脈が速くなって動悸が起こり、また動悸が急に治まるのが特徴です。時に失神することもあります。

・脈が抜ける
規則正しいリズムで打っていた脈が、急に抜けたように感じるものを「期外収縮」といい、最も多い不整脈のひとつです。期外収縮は健康な人でもしばしば起こりますが、脈の抜けの頻度が多くなると動悸、めまい、胸痛などが現れ、背景に心不全などがある場合は呼吸困難なども出現してきます。

・脈のリズムがバラバラ
心房細動や心房粗動で起こります。リズムが不整なため、動悸や胸部不快感、また呼吸困難になることもあります。

心臓以外が原因で起こる動悸

貧血

貧血すなわち赤血球数が減少すると、動悸、息切れ、疲れやすい、全身倦怠感(けんたいかん)、顔面蒼白、めまいなどさまざまな症状が現れます。

貧血には思春期以降の女性に多い鉄欠乏性貧血をはじめ、いくつもの種類があり、その原因も多彩です。背景にがんなどのある場合もあるため、貧血が起こったら一度検査を受けてください。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンの増加によるもので、動悸、頻脈、よく食べるのに体重が減る、発汗過多、手のふるえ、集中力がないなどさまざまな症状が現れます。甲状腺機能亢進症のひとつのバセドウ病(グレーブス病)では、5人に1人くらいに眼球の突出が現れます。

低血糖症

インスリン注射をしている糖尿病の人が注意しなければならない病態です。冷や汗や動悸、顔のほてりなどが突然起こり、低血糖がひどい時は意識障害も現れ、昏睡(こんすい)状態になることもあります。インスリン注射をしたあとで、急に食欲がなくなり、食べられなくなった時は注意が必要です。

心因性の動悸

心臓神経症

心臓自体に病気はないのに、動悸や呼吸困難、胸痛などが起こるものです。心臓病に対する不安感が背景にあり、常に心臓のことが頭から離れなくなります。検査をして心臓に異常がなければ、そのことをよく納得し、医師を信頼して治療を受けることが何より大切です。

パニック障害

不安は多かれ少なかれ、だれにでもありますが、特別な原因もなく突然強い不安に襲われる状態をパニック障害といいます。動悸や頻脈、胸が苦しい、ふるえ、冷や汗、めまい、吐き気などを伴って、今にも死ぬのではないかという恐怖にとりつかれます。

最初の発作のほとんどは長くは続きませんが、一度発作を経験すると、また起こるのではないかとさらに不安が高まり、今度はすぐには病院へ行けない場所などで発作が起こるようになり、次第に外出や乗り物に乗ることができないような状態に陥ります。

心療内科や精神科での治療が必要になります。

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