病気事典[家庭の医学]

こうせいしんびょうやくのふくさよう

抗精神病薬の副作用

抗精神病薬の副作用について解説します。

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抗精神病薬の副作用の解説(コラム)

 統合失調症(とうごうしっちょうしょう)の治療に抗精神病薬が使われ始めたのは1950年代で、クロルプロマジンの登場でした。その後、ハロペリドールなどが開発されて、とくに陽性症状(いんせいしょうじょう)に有効となりました。これらは定型抗精神病薬(ていけいこうせいしんびょうやく)(定型)であり、脳のドーパミン受容体の遮断によって回復した陽性症状は脳ドーパミンの過剰な作用が関与しています。

 1996年にリスペリドンを使うようになり、現在は非定型抗精神病薬(非定型)の時代になっています。非定型はセロトニンとドーパミン受容体などを拮抗し、陰性症状に対して回復するようになりました。

(1)パーキンソン病様の症状(錐体外路(すいたいがいろ)症状)

〈急性〉

 定型の副作用で起こる場合があります。

 まず、パーキンソニズムと呼ばれる症状があります。身体が硬くなり、動きが鈍くなり、手指、上肢、頭部、舌などに震えが出て、小股で歩くようになります。顔も仮面のようになり、よだれを流し、発語はゆっくりで、単調となり、字を書くと小さい字になります。

 急性ジストニアは、若い人では1週間以内に、筋肉の緊張異常として、顔や首など身体の筋肉群が収縮し、ひねり運動が出て、首が斜めにねじれたり、舌が突出したりします。

 急性アカシジアは、落ち着いて座っていることができずに、立ったり座ったり歩き回ったりします。焦りや不安、不眠などを伴うこともあります。

 以上のような副作用が出た時には、すみやかに対処すべきです。定型を減らし、非定型の薬に替えたり、抗パーキンソン薬を加えたりして治療することがよいでしょう。

〈遅発性(ちはつせい)〉

 遅発性ジスキネジアは、定型を長い間服用したのち、あるいは服用を中断すると現れます。入院患者の15〜20%と高頻度です。症状は、口のまわりと顔面の異常運動がよくあります。口をもぐもぐさせ、舌を突き出したり、唇をとがらせたり、舌を動かす時もあります。治療は、クロニジン(カタプレス、降圧薬)が有効です。

 遅発性ジストニアは、急性ジストニアと同じく、突然、筋肉群が意思とは関係なく収縮し、斜頸(しゃけい)の症状を生じます。反復的に運動あるいは異常姿勢を起こし、歩行も難しいこともあります。持続的な筋収縮を起こす症候群であり、痛みを伴います。発生頻度は1・5〜2%ですが、治療は困難です。クエチアピン(セロクエル)を使います。

 ピサ症候群は強直したまま屈曲する姿勢が特徴的です。身体の片側のみにジストニアが現れて、その独特な姿勢から命名されました。

 遅発性アカシジアの症状は急性と同様です。治療はクロナゼパム(リボトリール)を使います。

(2)乳汁分泌(にゅうじゅうぶんぴつ)

 定型の服用時、出産していないのに乳汁分泌を生じたり、生理不調、無月経になるのは、血中プロラクチンというホルモン濃度が高値になるためです。脳の下垂体前葉(かすいたいぜんよう)という場所で作られるプロラクチン細胞はドーパミンによって、その分泌を抑制されています。定型ではドーパミンを拮抗(きっこう)し、その抑制が外されたために過剰のプロラクチンが血中に放出されます。

 一方、非定型は、プロラクチンを一過性に上昇させても、乳汁分泌や生理不順を生じることは少ないのです。

 この副作用には、定型から非定型に替えるのがよいでしょう。

(3)水中毒(みずちゅうどく)

 こころの治療薬を服用している患者さんが、水分を極端に飲みすぎて1日に3L以上も飲むようになると、血液が薄められて血中のナトリウムの濃度(標準血清濃度128〜130nmol/L)が低下します。血清ナトリウムが115くらいに異常に低下すると、水中毒といわれる症状が出現します。

 最初の症状は、ねむけ、食欲不振、悪心、嘔吐、頭痛、腹痛などで、さらに進行すると、全身けいれんと昏睡(こんすい)を来すこともあります。

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