病気事典[家庭の医学]

さまざまないりょうきかん、びょういんとしんりょうじょ

さまざまな医療機関、病院と診療所

さまざまな医療機関、病院と診療所について解説します。

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さまざまな医療機関

ひと口に医療機関といっても、呼び名、規模、役割も実にさまざまです。医療機関は、まず「病院」と「診療所」に大別されます。細かい定義については後述しますが、私たちの地域で「医院」「クリニック」とうたっているものが診療所です。

病院も個人名を関した小規模の民間病院(私的病院ともいう)もあれば、公的病院もあります。公的病院の代表格だった国立病院も機構改革が進み、正確には独立行政法人国立病院機構が運営しています。

国立高度専門医療センターは通称「ナショナルセンター」とも呼ばれ、国立がんセンター、国立循環器病センターなどは、「国立」だったのですが、2010年4月から、各センターは独立行政法人化しました。

独立行政法人化後は、各センターの名称に「研究」の字句が挿入され、国立精神・神経センターには「医療」の字句も加えられました。これら各センターの総称にも「国立高度専門医療研究センター」と、「研究」の字句が加えられました。各センターの名称は次のように変わりました。

・国立がんセンター→独立行政法人国立がん研究センター

・国立循環器病センター→独立行政法人国立循環器病研究センター

・国立精神・神経センター→独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

・国立国際医療センター→独立行政法人国立国際医療研究センター

・国立成育医療センター→独立行政法人国立成育医療研究センター

・国立長寿医療センター→独立行政法人国立長寿医療研究センター

いまあげた以外の国立病院だった病院は、独立行政法人国立病院機構が運営することになり、「独立行政法人国立病院機構○○病院」という名称になりました。このように国立病院は大幅に機構改革されました。

こうした国立系の病院のほかに、都道府県や市町村が運営する公立病院(自治体病院ともいう)もあります。大学医学部、医科大学の附属である大学病院もあります。

このように実にさまざまな医療機関があるので、それぞれの医療機関がどんな機能、どんな特徴をもっているのか、熟知しておく必要があります。

病院と診療所

先ほども少し触れましたが、医療機関は「病院」と「診療所」の2つに大別されます。「病院」を名乗るには、入院用のベッドを20床以上もち、医師が常時いて、1日24時間患者に対応できる体制になっていることが条件づけられています。

これに対し、入院用のベッド数がゼロ(無床)か、あっても19床以下のところが「診療所」です。医院、クリニックという看板を掲げているいわゆる開業医は、すべて診療所に含まれます。診療所は医師である院長1人と、受付事務などを兼ねた看護師が2〜3人いるというのが、ごく一般的なスタイルです。

診療所のうち、入院用のベッドをもっている、いわゆる有床診療所は全体の4分の1程度で、あとは外来患者を中心にすえ、時には訪問診療も行うという、ベッドをもたない無床診療所です。外来患者はあまり受けいれないで訪問診療中心の診療所も、徐々にですが増えています。高齢社会を反映して、寝たきり患者などを中心に在宅医療を支援しようというものです。

診療所は、その設備やスタッフなど法に定められた設置要件ゆえに、診療科目については内科だけ、小児科だけ、あるいは皮膚科だけというように、単科を標榜するところがほとんどです。

もちろん複数科目を標榜する診療所もないわけではありません。その場合は、「内科・小児科」「外科・整形外科」というように、お互いに関連する診療科に限られているというのが一般的です。しかし日本の場合、医師免許さえあれば自由に診療科目を標榜できるので、時に1人の医師が内科、小児科、外科、皮膚科、放射線科……と多くの診療科の看板を出しているケースもあります。ひとつの診療科をきわめるのは大変なことです。「この医師の本当の専門はなんなの?」というような診療所もあり、このようなケースは疑問視せざるを得ません。

診療所で扱われるのは、通院治療だけで十分コントロールできる程度の、比較的軽症の病気が中心となります。別の言葉で言えば、診療所はプライマリ・ケアを担います。プライマリ・ケアとは、医療行為のなかで初期の段階を受け持つ医療といえます。医療への入り口という意味で一次医療ともいい、コモンディジーズ(ありふれた病気)を中心に診療します。病気のふるい分けも大切な仕事で、難しい病気や長期入院を要する重症患者については、患者個々の病状に見合った医療機関を選んで紹介することになります。

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