病気事典[家庭の医学]

いんふぉーむど・こんせんと

インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントについて解説します。

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解説

インフォームド・コンセントは、医療を考えるうえで大切なキーワードのひとつです。医療はインフォームド・コンセントから始まるといっていいかもしれません。この言葉もおなじみになりましたが、復習しておきましょう。

インフォームド・コンセントは、直訳すれば「情報を与えたうえでの同意」、あるいは「知らされたうえでの同意」となります。日本医師会は「説明と同意」と訳しています。医療現場において、医師が患者に病状や治療方針などを伝え、患者の同意を得ることです。平たく言えば、医師が患者に対して病気に関する十分な説明を行い、そのうえで治療法などを患者が選択して同意することです。

一昔前は、医師の言うことは絶対的なもので、患者の同意など関係なく医療は進められたものです。それは医師が主体の医療であって、患者が主人公の医療ではありません。医師と患者が医療情報を共有して、患者が納得したうえで治療をしていくためにインフォームド・コンセントが必要になるのです。いのちの主人公、体の責任者は患者自身であるということが、まず前提にあります。

しかし日本では、すべての医師、病院が本当にきちんとインフォームド・コンセントを行っているとは残念ながら言えないようです。医師のなかには、インフォームド・コンセントを単なる儀式と考えている人がいます。型通りの説明をして、これでこと足れりとする医師もいます。そんな形式的なものはインフォームド・コンセントとはいいません。

医師の説明に対して納得の行くまで繰り返し質問することが大切です。質問することはあらかじめ「診療ノート」などにまとめておきましょう。医師の説明もきちんとメモをとることが大切です。医師が患者に伝えなくてはならないことは、最低限、次のようなことです。

(1)患者の病名、病状を正しく伝える。

(2)治療に必要な検査の目的を正しく伝える。

(3)治療のリスクや予想される副作用などを伝える。

(4)治療法や処置の成功の確率を説明する。

(5)その治療法や処置に代替の方法があれば伝える。

(6)これらの治療を拒否した場合、どういう結果になるか伝える。

ここで注意しておきたいことは、治療に伴うリスク、成功率など、患者にとって好ましくない情報は、医師はあまり話したがらない傾向があるということです。

仮に、あなたが外科医に手術をすすめられている場合を考えてみましょう。

日本の外科医は、「手術をしたほうがいい」「手術をしないと助からないよ」と、手術に誘導するケースが多いといわれています。もちろん外科医は善意ですすめるのですが、インフォームド・コンセントは、患者が自分の治療法を自分で決定するためにあるのです。「先生にすべておまかせいたします」という態度はとるべきではありません。

医師に手術をすすめられた時は、次のようなことを聞きましょう。

(1)手術は本当に必要なのか、納得のいくまで聞きましょう。

(2)手術以外の治療法(代替の治療)はないのか、聞きましょう。「薬では治らないのか」「放射線治療では治らないのか」など、手術以外の治療法を具体的に聞くのです。

(3)手術をした場合の死亡率を聞きましょう。治療には臨床指標というものがあります。この手術は何%の確率で失敗しているという数字があるので、この数字を聞きましょう。

(4)合併症の種類と、その罹患率を聞きましょう。

(5)軽快および治癒率を確かめましょう。

(6)手術を担当する外科医は、これまでこの手術を何例執刀し、何%の成功率かを質しましょう。

以上の質問には答えないで、「私を信用できないのか」と怒るようならば、その医師は見限る必要があるかもしれません。

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