病気事典[家庭の医学]

いやくぶんぎょうのしんてん

医薬分業の進展

医薬分業の進展について解説します。

執筆者:

解説

「薬は両刃の剣だ」とよくいわれます。「クスリは逆から読めばリスクだ」ともいわれます。薬は病気を回復させ、しばしば人の生命を救います。しかし使い方を誤ると、時として健康を害し、生命を失うこともあります。主作用の反面、必ず副作用もあるのです。薬という化学物質を体のなかに入れることは、本質的に有害なことなのです。

薬は正しく付き合っていかなければならないものです。医療事故のうち投薬ミスの割合はかなり多いのです。薬の量を間違える。間違った薬を投与される。患者を取り違えて渡す。副作用についての注意不足……。

日本では長く、医師が処方し、かつ調剤して患者に薬を渡すという形がとられてきました。これは欧米などでは考えられないことです。医薬分業が行われていなかったのです。しかし近年、日本も医薬分業が急速に進んできました。患者は医師から処方箋を発行してもらい、薬局に行き、薬剤師に調剤してもらって薬を受け取る。医師と薬剤師が責任分担を明確にして分業する制度が医薬分業です。今様の言葉で言えば、医薬分業はグローバル・スタンダード(世界標準)なのです。

ともあれ、世界のなかでも日本は医薬分業の進んでいない特異な国だったのですが、やっとグローバル・スタンダードに近づきつつあることは、まずは喜ばしいことです。

医薬分業という制度を私たちがうまく活用していけば、薬の事故を防ぐなど大きなメリットがあります。医師は薬のことは何でも知っているように思われがちですが、医薬品の薬理作用などについては必ずしも専門家ではありません。医師は、診察、診断、手術などに専念し、薬のことは専門家である薬剤師に任せるほうが、薬の使用がより安全になるのです。

医薬分業のもつ意味とメリット

医薬分業をしている、すなわち「院外処方箋」を発行してくれる医師、あるいは医療機関を選ぶことが、患者にとって意味もありメリットがあると思います。医薬分業になると、医師は患者を診察し、病状にあった薬を処方します。患者は院外処方箋を受け取り、それを街の調剤薬局に持っていきます。薬局では薬剤師が処方箋に基づいて調剤し、薬を患者に渡します。

院外処方箋のよいところは、自分ののむ薬の名前がわかることです。そして、薬剤師が専門家の厳しい眼で薬の名前、量や使用方法が間違っていないか、薬の組み合わせにおかしいところはないかをチェックします。もし疑問があれば、処方箋を発行した医師と意見を交換したあとでなければ調剤できないことになっています。

医師も院外の、すなわち外部の薬剤師のチェックにさらされるわけですから、処方箋を発行する時、より慎重になるというわけです。この意味でも、医薬分業をしている病院や診療所を選ぶメリットがあります。

医薬分業方式を採用していない医療機関にかかった時でも、医師に「院外処方箋を発行してください」と希望することはできるのです。医師法にも、そのことが明記されています。

上手な医療の利用法を読んだ人によく読まれている記事

情報提供元 : (C)株式会社 法研 執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。