病気事典[家庭の医学]

かかりつけやっきょくをもちましょう

「かかりつけ薬局」をもちましょう

「かかりつけ薬局」をもちましょうについて解説します。

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解説

最近、医薬分業が急ピッチですすんでいます。今まで通っていた病院や診療所を訪れると、「当院は医薬分業を行うことになりました。」というような掲示を見ることが多くなりました。そして、病院や診療所のすぐ近くに調剤薬局ができていたりします。

医薬分業に慣れていない日本人は、意味がよくわからないまま、すぐ近くの薬局に行くことになります。病院や診療所のすぐ前など、至近距離にある薬局のことを「門前薬局」といいます。

多くの人は門前薬局に行かなくてはならないと思い込んでいますが、そんな決まりはありません。院外処方箋はどこの薬局に持っていってもいいのです。あなたの家の近く、あるいは職場の近くの便利なところ、しかも、このことがもっとも肝心なのですが、親切で気兼ねなく相談に応じてくれる薬剤師のいる薬局を「かかりつけ薬局」に選ぶことです。

街の薬局のなかで「基準薬局」という看板を見かけます。これは日本薬剤師会がつくった制度で、かかりつけ薬局を選ぶ時の目安になると思います。

かかりつけ薬局をもつと、あなたや家族の「薬歴カード」(くすりのカルテ)をつくり、薬の重複やのみ合わせなどをチェックしてもらえます。寝たきりの患者の場合などには、自宅に薬を届けてもらえたり、説明・相談に応じてもらうこともできます。

内科、整形外科、耳鼻咽喉科……と複数の診療科を同時に受診することはありませんか。それぞれの医師から数種類の薬が処方されると、全部合わせると10種類以上の薬をのむということもありえます。複数の医師が出した薬のなかには、同じような作用の薬が重複していることがよくあるものです。薬と薬の相互作用もチェックしないと危険です。患者の薬の使用歴、アレルギーの有無、過去の副作用の記録など「薬歴カード」を一本化して管理してもらうと安全です。

いくら医薬分業といっても、それぞれの病院や診療所の門前薬局に別々に行ったのでは、あまり意味がありません。一度かかりつけ薬局を決めたら、できるだけ長く付き合うと、薬歴カードも充実することになり、賢い薬との付き合い方になると思います。調剤薬局の薬剤師は真剣に取り組んでおり、総じて親切に対応しています。

薬局のリスクマネージメント

薬を誤って投与したり誤ってのむことを「誤薬」といいますが、時には命に関わる医療事故につながることもあります。それだけに薬剤師は調剤事故の防止には神経をつかっています。調剤薬局の薬剤師は、どんなリスクマネージメントを実行しているのでしょうか。

(1)処方箋受付

患者の姓名を確認します(もちろんフルネームで)。まれにですが、病院や診療所の間違いで他人の処方箋を持ってくることもあるといいます。患者が小児の場合、かならず体重を確認します。小児の場合、体重によって薬の量を決めるからです。

(2)処方箋の内容を点検する

処方箋の記載内容を細かくチェックします。手書きの場合は読みにくいものがあります。しかし無理に判読しようとしないで医師に直接問い合わせます。最近はオーダリングシステムといって、コンピュータで入力することが多くなっています。これは手書きと違って確かに読みやすいのですが、油断大敵です。薬の名前はほとんどカタカナなので、入力ミスが起こりやすいのです。

(3)薬歴を確認する

副作用やアレルギーの有無、併用薬との相互作用はないかなどをチェックします。

(4)正確な調剤をする

調剤する薬剤師が、再度、薬名、分量、用法、容量を確認します。

(5)薬を患者に渡す時

患者の姓名、薬袋(やくたい)の姓名を照合します。

調剤薬局は、以上のようなことを行っています。医薬分業とは、単に医療機関と薬局が切り離されただけではないのです。このあたりをよく理解して、正しい薬との付き合い方を考えていきたいものです。

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