病気事典[家庭の医学]

いしにかかるじゅっかじょう

医師にかかる10カ条

医師にかかる10カ条について解説します。

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医療の主人公は患者

賢い患者になるためには、「患者こそ医療の主人公」であることを、まず患者自身が確認する必要があると思います。

1998年、厚生省(当時)の「患者から医師への質問内容・方法に関する研究班」から『医者にかかる10カ条』が発表されました。これは医療消費者団体「ささえあい医療人権センターCOML」から小冊子となり、広く普及しています。10カ条は、サブタイトルとして、〈私たち一人ひとりが「いのちの主人公」「からだの責任者」〉であると強調しています。

医者にかかる10カ条

あなたが“いのちの主人公・からだの責任者”

(1)伝えたいことはメモして準備

(2)対話の始まりはあいさつから

(3)よりよい関係づくりはあなたにも責任が

(4)自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報

(5)これからの見通しを聞きましょう

(6)その後の変化も伝える努力を

(7)大事なことはメモをとって確認

(8)納得できない時は何度でも質問を

(9)医療にも不確実なことや限界がある

(10)治療方法を決めるのはあなたです

診療ノートに記入しよう

10カ条は平易な言葉で書かれていて、いまさら解説する必要はないでしょう。あえてつけ加えるならば、「診療ノート」を持参して、記録されることをすすめます。医者にかかる10カ条の1、7条も、メモをとることの大切さを強調しています。「診療ノート」といっても形式はこだわりません。携行に便利なように文庫本くらいの小型のノートがよいでしょう。

病院、診療所、歯科診療所へ行った時には、日付、医療機関名(診療所、歯科診療所、病院の名前)、医師の名前を書き、診療内容、検査結果、処方された薬の名前、薬の形(錠剤の色など)、副作用などを書き留めておきます。聞き取りにくかったり、わからなかったら、何度でも質問することです。検査のデータ、薬の名前などは数字やカタカナでわかりにくいものですから、医師にノートを渡して書いてもらってもよいでしょう。

「先生の前で診療ノートを記入するなんてちょっと勇気がいる」と思う人もいるかもしれません。そんなに大げさに考えないでください。よほど記憶力のよい人は別ですが、「GPTがいくら、尿酸値がいくら……」と、医師がいう数値を記憶することは困難です。それをメモするのに何の遠慮がいるでしょう。検査値、薬の名前は、当然ながら患者が知っておくべき大切な情報です。それを怪訝(けげん)がったり厭いというような医師は、ちょっと敬遠したほうがいいと思います。

検査結果などコピーをもらえるものはもらって、診療ノートに張り込んでおくとよいでしょう。手帳に書き留めておくと、医療事故に巻き込まれた時にも役立ちます。

診察の前にメモをまとめておこう

診療ノートは、医師から与えられる情報をメモするだけではなく、こちらから伝えることもメモするとよいでしょう。外来を訪れた時は、医師に伝えたいことは簡潔なメモを前もって書いておき、それを見ながら要領よく医師に伝えるようにします。なぜこの病院を訪れたのか、自覚症状・病歴・薬歴(アレルギー症状も含む)などを的確に伝えるようにします。あなたの自覚症状、病歴を正しく伝えることから診療は始まるのです。あなたの正確な情報が、誤診や医療事故を防ぐ大きな力になります。

大病院の外来患者はものすごい人数なので、肝心なことを伝え、答えを聞くとなると簡潔なメモは欠かせません。予診票を書かせる病院も多いので、メモもそれと一緒に外来担当の看護師に渡しておくのも、ひとつの方法です。

医師もメモは歓迎する人が多くなりましたが、だらだらと書かれていたら読む気になりません。簡潔を旨として、箇条書きがよいでしょう。

受診時のマナー

言わずもがなと思いますが、医療は医師あるいは看護師など医療スタッフとの信頼関係のうえに成り立っています。お互いに尊重し合う関係から医療は始まるのです。医師と患者、看護師と患者との円滑なコミュケーションがきわめて大切です。好ましい人間関係を築くには、まず挨拶が大切です。

これは患者ばかりの問題ではありません。医師のほうもパソコンの画面ばかり見て、ちっとも患者のほうを向かないという批判もありますが、医療者も患者も、医療の基本はコミュニケーションであることを忘れたくないものです。

女性に考えていただきたいことですが、受診時は化粧はしないことです。医師は顔色、肌の色つや、唇の状態を見て判断することもあります。濃い化粧などしていると、診察の妨げになります。また、聴診や触診も行うので、着脱のしやすい衣服を着用して受診しましょう。

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