病気事典[家庭の医学]

しゅっせいぜんしんだん

出生前診断

出生前診断について解説します。

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さまざまな診断がある

妊娠中に胎児の状態を検査して診断することを、出生前診断といいます。出生前診断の分類としては、(1)無侵襲(むしんしゅう)的検査と侵襲的検査という分類、(2)スクリーニング検査と確定診断検査という分類、(3)画像検査と遺伝学的検査という分類などがあります。

(1)の無侵襲的検査には、母体血清マーカー検査や母体血胎児(ぼたいけつたいじ)染色体検査(NIPT)、超音波検査などがあります。その1つは妊婦さんの採血で調べる検査で、ダウン症や18トリソミーの確率を知ることを主な目的とする母体血清マーカー検査(妊娠15週から)や母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせたコンバインド検査(妊娠10~13週)があります。母体血中胎児DNAを用いた、より精度が高い母体血胎児染色体検査(NIPT)(妊娠10週から)もあります。また、侵襲的検査は胎盤(たいばん)の一部を採取する絨毛(じゅうもう)検査(妊娠10~13週)、羊水(ようすい)検査(妊娠16~17週)などがあります。

(2)のスクリーニング検査というのは、胎児が何らかの異常をもつ可能性が高いのか低いのかを調べる検査で、その結果によって確定診断検査に進むかどうかを決めることになります。母体血清マーカー検査やNIPT、コンバインド検査などが該当します。これらは確実な診断を行うものではなく、診断の確定には羊水検査などの確定診断検査が必要です。侵襲的検査は流産リスクのある検査で、絨毛検査や羊水検査が該当します。確定診断検査の多くは流産リスクのある侵襲的検査であるため、あらかじめスクリーニング検査でふるい分けを行うのです。

(3)については、超音波検査で胎児の染色体異常の可能性を検査することもあるので、画像検査であると同時に遺伝学的検査となる場合もあります。

一般的には出生前診断というと遺伝学的検査を意味することが多く、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2011年)」によれば、「出生前診断には、広義には羊水、絨毛、その他の胎児試料などを用いた細胞遺伝学的、遺伝生化学的、分子遺伝学的、細胞・病理学的方法、着床前診断、および超音波検査などを用いた画像診断的方法などがある。しかしながら、出生前診断には、医学的にも社会的および倫理的にも留意すべき多くの課題があることから、検査、診断を行う場合は日本産科婦人科学会等の見解を遵守し、適宜遺伝カウンセリングを行った上で実施する。」とされています。絨毛検査は妊娠10~13週に、羊水検査は妊娠16~17週に採取するのが一般的です。

また、出生前診断とは異なり、体外受精に際して受精卵の一部の細胞を用いて行う遺伝学的検査・診断は、着床前診断(ちゃくしょうぜんしんだん)と呼ばれ、重症の遺伝性疾患や流産を繰り返す染色体転座の保因者の方などに実施されます。

適応と注意点

遺伝学的出生前検査(診断)は、診断の目的が明らかで、かつ診断のための具体的な方法が確立されていることが必須で、表2のような疾患について行われることがあります。

すべての出生前診断は、胎児の生命倫理の点からは実施に慎重な意見もあります。出生前診断がもたらす意味をご夫婦が十分に理解し同意すること(十分なインフォームド・コンセント)および厳重な倫理的配慮が必須となり、検査の前には十分な遺伝カウンセリングを受ける必要があります。

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