病気事典[家庭の医学]
かていようぼうちゅうざいちゅうどく
家庭用防虫剤中毒
家庭用防虫剤中毒について解説します。
執筆者:
大阪府立急性期・総合医療センター副院長
吉岡敏治
どんな中毒か
家庭用防虫剤には従来、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳(しょうのう)の3種類の成分が使われていました。最近、シート状の防虫剤が市場に出回っており、これにはピレスロイドが使われています。
防虫剤市場の70%を占めるパラジクロルベンゼンは、数g(碁石大のもの1個)を飲み込んでも健康に害を及ぼしません。ピレスロイドも毒性が低い物質です。これに反し、ナフタリンや樟脳は2~3g(成人)で中毒症状を引き起こします。防虫剤中毒では、その成分を確認することが第一です。
防虫剤による中毒は、乳幼児や認知症の老人の誤食によるものが多くなっています。認知症の患者さんが口にする場合は、薬やアメ玉と思ってなめたり、飲み込んだりというものであり、袋の上からかじる小児の誤食よりずっと大量になります。
症状の現れ方
ナフタリン中毒の症状は溶血(ようけつ)(赤血球の崩壊)によるもので、大量に摂取すれば腎障害を起こします。急性中毒では吐き気・嘔吐、腹部不快感、発汗、頭痛、振戦(しんせん)(震え)、重症の場合では意識障害がみられます。
樟脳は中枢神経毒であるため、興奮、呼吸促進、頻脈(ひんみゃく)、けいれんが現れます。重症の場合では錯乱(さくらん)、意識障害から呼吸停止に至ります。
樟脳中毒の発症は遅くとも2時間以内なので、誤食後2時間以上経過して無症状なら問題はありません。
治療の方法
解毒剤はなく、けいれん対策や呼吸管理などの対症療法が行われます。
中毒と環境因子による病気を読んだ人によく読まれている記事
中毒と環境因子による病気でよく読まれている解説
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
|
執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。