病気事典[家庭の医学]

にょうどうえん

尿道炎

尿道炎について解説します。

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どんな病気か

尿道炎は主に男性尿道炎を意味し、その多くは性感染症(せいかんせんしょう)に伴う場合がほとんどです。女性の場合は、膀胱炎(ぼうこうえん)から炎症が波及した場合に起こり、臨床的には女性尿道炎を単独で診断することはありません。

原因は何か

男性の尿道炎の原因は性行為による微生物感染であり、淋菌による淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん)と、それ以外の微生物による非淋菌性(ひりんきんせい)尿道炎とに大別されます。

非淋菌性尿道炎の主要原因微生物はクラミジアで、ほぼ4~5割を占めています。これは、自覚症状が軽いクラミジア感染が、一般女性に蔓延(まんえん)しているためと考えられます。

クラミジア以外の病原微生物としては、最近マイコプラズマ・ゲニタリウムが注目されており、これはクラミジアを除いた非淋菌性尿道炎における原因微生物の約4分の1を占めると考えられています。そのほかの原因微生物としては、ウレアプラズマ・ウレアリティクム、腟トリコモナスなどがあげられます。

淋菌性尿道炎では、ソープランド女性を感染源とする患者の頻度が低下し、逆にファッションマッサージなど主にオーラルセックスをサービスとする風俗女性からの感染者の増加が目立っています。これらの女性の咽頭に存在する淋菌が尿道に感染するものと考えられます。性風俗産業および一般女性の性に対する認識の変化が、尿道炎の感染源の変化にも影響しているものと思われます。

症状の現れ方

症状は非淋菌性尿道炎と淋菌性尿道炎とで大きく違うため、分けて説明します。

(1)非淋菌性尿道炎

代表的なものとしてクラミジア尿道炎があります。感染から症状発症までの潜伏期間が1~3週間と長く、比較的ゆっくり発症し、尿道痛は軽いかほとんどありません。軽い掻痒感(そうようかん)(かゆみ)を覚える場合もあり、分泌物は漿液性(しょうえきせい)でその量もあまり多くありません。マイコプラズマ、ウレアプラズマによる尿道炎もクラミジアとほぼ同様の症状を示します。腟トリコモナスによる尿道炎は尿道痛、掻痒感、膿分泌(のうぶんぴつ)などの症状がみられます。

(2)淋菌性尿道炎

感染から約1週間以内に急性尿道炎が発症します。外尿道口から濃厚なうみの排泄、初期尿道痛および外尿道口の発赤・腫脹(しゅちょう)(はれ)などの症状が認められます。クラミジア、淋菌が尿道口から逆行性に侵入し、前立腺炎(ぜんりつせんえん)や精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)を起こすこともあります。

検査と診断

尿道炎は、病歴、臨床症状および尿道分泌物または初尿(しょにょう)中の白血球の存在により診断されます。尿道分泌物は1000倍、初尿沈渣(ちんさ)は400倍で顕微鏡検査し、各視野5個以上の白血球が認められれば尿道炎と診断できます。

クラミジア尿道炎の診断はクラミジアの検出によります。クラミジア自体が細胞内に寄生するため、以前は尿道粘膜をこすり取ってクラミジアの遺伝子を検出していましたが、苦痛を伴うため、最近は初尿ないし分泌物を用いて遺伝子診断を行います。

淋菌性尿道炎は、尿道分泌物の塗抹染色標本の顕微鏡検査と、分離培養同定法(ぶんりばいようどうていほう)が診断の基本です。また最近は、抗原検出法、遺伝子診断法などが普及していますが、それらでは薬剤感受性試験(どの薬で効果があるか調べる)ができない欠点があります。

治療の方法

感染症であるため、抗菌薬の投与が基本になります。クラミジアに対してはテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬が用いられます。

日本化学療法学会標準法で測定した結果、マクロライド系のクラリスロマイシンが最も強い抗菌力を示し、次にテトラサイクリン系のミノサイクリン、ドキシサイクリンの抗菌力が強く、ニューキノロン系薬剤は同等ないしやや抗菌力が劣ります。最近、淋菌性尿道炎に対してキノロン耐性菌が増加しており、注意を要します。

病気に気づいたらどうする

前述した症状があったり、性感染症の疑いがある場合は泌尿器科を受診してください。家族など他人にうつす可能性については、風呂などで感染することはありませんが、早く治療をすることが大切です。

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