病気事典[家庭の医学]
あじそんびょう(まんせいふくじんひしつきのうていかしょう)
アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)
アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)について解説します。
執筆者:
弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学助教
崎原 哲
どんな病気か
副腎皮質ホルモンは生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。このホルモンが、何らかの原因で体が必要とする量を分泌できなくなった状態を、副腎皮質機能低下症といいます。
これには、副腎自体の病気による場合と、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する下垂体(かすいたい)の病気による場合とがありますが、アジソン病は、このうち副腎の病気が原因で慢性に経過したものです。
原因は何か
副腎は両側の腎臓の上、左右に2つありますが、両側の副腎が90%以上損なわれるとアジソン病になります。原因として最も多いのは、結核(けっかく)(副腎結核)と自己免疫によるものです。まれにがんの副腎への転移によるもの、先天性のものなどがあります。
症状の現れ方
副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあります。アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。現れる症状はさまざまですが、主なものとして、(1)色黒、(2)倦怠感(けんたいかん)、脱力感、(3)体重減少、(4)胃腸症状(食欲不振、便秘、下痢)、(5)低血圧、(6)低血糖などがあげられます。また精神症状(不安、集中力の低下など)や腋毛(えきもう)、恥毛(ちもう)の脱落などもしばしば認められる症状です。
自己免疫が関係する特発性(とくはつせい)アジソン病の場合、甲状腺疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。
検査と診断
一般的な血液検査、尿検査に加え、ホルモンの検査、腹部CTなどが必要になります。ホルモンの検査は、血液中の副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、尿中に排泄される副腎皮質ホルモンなどを測定するほか、ACTHやACTH放出ホルモン(CRH)を投与した後の副腎や下垂体の反応により、副腎の機能を評価します。そのほか、副腎を損なう原因を調べるため、結核など感染症に対する検査、がんの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。
治療の方法
副腎皮質ステロイド薬を、病気の程度、日常生活に合わせて補充します。通常、1日1~2回の内服ですみますが、けがや発熱などで体に強いストレスがかかる場合は、内服量を増やす必要があります。
病気に気づいたらどうする
アジソン病の初期では副腎皮質の障害が軽度なので、ホルモンの分泌も生活に支障を来さない程度に保たれています。自覚症状もはっきりしたものではなく、気がつかないことがほとんどです。しかし、この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して危険な状態になることがあります。前述のような症状があった場合、内分泌・代謝を専門とする病院で一度精密検査をしておくことが望まれます。
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情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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