病気事典[家庭の医学]
こうけつあつせいもうまくしょう/もうまくどうみゃくこうかしょう
高血圧性網膜症/網膜動脈硬化症
高血圧性網膜症/網膜動脈硬化症について解説します。
執筆者:
前帝京大学医学部附属溝口病院眼科教授
河野眞一郎
どんな病気か
高血圧症や動脈硬化症は、全身の血管に異常が起こる病気です。当然、網膜の血管にも異常な変化が起こりますが、それを高血圧性網膜症、網膜動脈硬化症と呼んでいます。
網膜血管の異常は、眼底を観察することによって明瞭に見ることができます。高血圧症や動脈硬化症の人は、よく内科で眼底検査を受けるよう指示されます。また、人間ドックや成人病検診でも眼底検査や眼底写真の撮影が行われます。
それは、全身のなかで網膜の血管だけが直接見ることができるからです。網膜の血管を見ることによって全身の血管の変化を推定することができるので、眼底検査は高血圧症、動脈硬化症の内科的な診断や治療のうえでとくに重要です。
症状の現れ方
普通、自覚的な眼の症状はめったに現れません。急激に血圧が上がる急性高血圧症では網膜の出血やむくみが起こり、そのため視力が低下することがありますが、高血圧症の大部分を占める原因不明の本態性高血圧では、症状が現れるのはむしろまれです。
検査と診断
眼底検査を行ったり、眼底写真を見ることによって診断されます。高血圧性の変化としてはまず動脈が細くなりますが、血圧が著しく高くなると出血や白斑(はくはん)、網膜のむくみ、視神経のむくみなどが起こります。
動脈硬化性の変化としては、動脈の反射が高まる、静脈が太くなる・蛇行(だこう)する、動脈と静脈が交差する部で静脈がくびれる(図37)などがあり、進行すると動脈が銅線や銀線のようになります。医学的には、これらの変化はいくつかの段階に分類され、内科での診断や治療の参考にされます(表5)。
治療の方法
網膜の血管だけを治療することはできませんし、しても意味がありません。血圧のコントロールなど、内科的な治療が優先されます。
高血圧性網膜症・網膜動脈硬化症は、それ自体が視力を脅かすことはまずありません。しかし、重要なのは、あとの項で述べる網膜動脈閉塞症(へいそくしょう)や網膜静脈閉塞症、虚血性視神経症(きょけつせいししんけいしょう)など視力を低下させる病気の要因になることです。それらを予防するためにも、全身的な治療が大切になります。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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