病気事典[家庭の医学]
こつのうしゅ
骨嚢腫
骨嚢腫について解説します。
執筆者:
秋田大学医学部保健学科理学療法学講座教授
岡田恭司
どんな病気か
骨の内部の骨髄(こつずい)といわれる部分が空洞状になり、血液の上澄み液(血清)に似た液体がたまったものです。空洞の壁は薄い膜でおおわれているので、水を入れた風船が骨のなかに入っているようなものを想像するとわかりやすいでしょう。この風船が徐々に大きくなると、骨の外側の厚い部分(骨皮質)が圧迫されて、外へふくらみながらだんだん薄くなって痛みが出たり、さらにひどくなると骨折を起こしたります。
徐々に大きくなるので骨の腫瘍に似ていますが、どこにも腫瘍細胞は確認されないため、骨腫瘍類似疾患に分類されています。骨嚢腫の患者さんはほとんどが20歳以下で、病変は上腕骨や大腿骨(だいたいこつ)などによくみられます。
症状の現れ方
嚢腫が大きくなって骨皮質が薄くなり、骨が弱くなって、普通ならば折れないような状況や軽く転倒して腕で支えただけで骨折(病的骨折)を起こして気がつきます。ほかの原因でX線検査を行い偶然発見されることもありますが、このような場合には皮質がまだしっかりしていることが多いようです。
検査と診断
X線写真では骨のなかにはっきりした境界をもった病変部として見えます(図44)。骨嚢腫の周囲の骨皮質は薄くなり、まわりに広がって、ここに骨折が起こります。嚢腫部に骨折が起こると、折れた小さい骨片が嚢腫病変内へ落ちて見えることがあり、特徴的だといわれています。
CT検査では、この骨片が嚢腫内にあるのが確認されます。骨嚢腫はMRIでは骨内の液体として写ります。もし、充実した固まりの部分が一部に認められた場合には、動(どう)脈瘤様(みゃくりゅうよう)骨嚢腫や骨巨細胞腫(こつきょさいぼうしゅ)などの腫瘍、あるいは線維性骨異形成が疑われます。
治療の方法
X線検査やCT、MRIなどで診断がついた場合には、いくつかの治療法が行われています。
一番軽い治療は、皮膚の上から鋼線を刺して骨嚢腫の壁に複数個の穴をあけ、さらに骨嚢腫内に白濁したステロイド薬を注入する方法です。また、小切開で骨の嚢腫の壁に中空のドリルをいれる方法も行われます。
これらの方法で、多くの場合は骨嚢腫内に十分な骨が形成されます。もし骨形成が十分でなかったり、一度よくなったのが再び嚢腫が広がった場合でも、ステロイド薬の注入などは傷をつけることなく可能ですから、繰り返し行って様子を見ることができます。
どうしてもうまく行かない場合には、手術で嚢腫壁を適切な範囲で削り、なかの膜状構造物をすべてとり、腸骨というところから取った自分の骨や人工骨を移植します。こういった手術のあとでも再発したり、嚢腫が残ったりしますので、整形外科医による経過観察が必要となります。
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