病気事典[家庭の医学]

ういるすせいげりしょう

ウイルス性下痢症

ウイルス性下痢症について解説します。

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どんな感染症か

主に、ロタウイルス、ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、腸管アデノウイルス、パレコウイルスが原因の嘔吐・下痢症です。そのほかに、E型あるいはA型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、アイチウイルスなども腸管感染症の原因になります。

日本では乳幼児を中心に、主にロタウイルスは冬期後半にみられ、ノロウイルスは初冬にみられます。また、ノロウイルスは食中毒の原因ウイルスでもあります。ノロウイルス感染症は二枚貝などの食中毒とともに、調理従事者からの食品の汚染や、施設内でのヒト‐ヒト感染が問題となっています。これらの感染症の症状には個人差があります。成人になるまでにほとんどの人が感染します。

症状の現れ方

突然の嘔吐・下痢で始まります。過去に感染をしていると、気持ちが悪い程度で終わることがあります。

主要な6つのウイルスのなかで、ロタウイルスの症状が通常いちばん重症です。ロタウイルスでは下痢が1週間ほど続くことがありますが、そのほかのウイルスでは数日で終わります。

そのほか、発熱、呼吸器症状を伴うことがあり、まれにけいれん、脳症、腸重積(腸管の一部が腸管腔内へ入り込む)などが起こります。

検査と診断

乳幼児で冬期の下痢症の場合は、ロタウイルスとノロウイルス、サポウイルスなどの小型球形ウイルス感染症を考えます。学童・成人では、細菌およびウイルス性の感染症をまず考えます。膿性血便の場合は、細菌感染をまず考えます。顕微鏡下で細菌性の場合は好中球が多くみられます。

ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、アストロウイルスでは、イムノクロマト法による迅速診断薬が市販されています。下痢を起こすウイルスは多種あるために、各ウイルスごとのプライマーを用いた遺伝子増幅法があります。食材からは定量法も用いられます。

治療の方法

嘔吐に対しては鎮吐薬(ちんとやく)を使用します。経口摂食が可能であれば、少量で回数を多くした食事が原則です。経口補液を行うこともあります。経口で摂食が不可能な場合、あるいはその危険性がある場合は経静脈輸液を行います。

止痢薬(しりやく)は原則として使いませんが、ラックBやビオフェルミンなどの生菌製剤は用います。

病気に気づいたらどうする

下痢の頻度が数回以上、次第に下痢が多くなってくる、いつもと違って元気がない、うとうとする、涙や尿の出が少なくなったなどの場合は受診してください。嘔吐で経口摂食ができない場合や、けいれんなどを伴う時も必ず受診します。

乳幼児の点滴などを考えると、小児科専門医に受診することが望まれます。

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