病気事典[家庭の医学]

きゅうせいしきゅうたいじんえんのしんだん

急性糸球体腎炎の診断

急性糸球体腎炎の診断について解説します。

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急性糸球体腎炎の診断の解説(コラム)

 まず、原因となった溶連菌(ようれんきん)の感染があったことを証明する必要があります。咽頭(いんとう)・扁桃(へんとう)の細菌培養検査で、溶連菌の有無をみます。また、血液検査で溶連菌に対する抗体(ASO、ASKなど)が増加していないか検査します。腎炎が発症した時点では、溶連菌の感染から1〜2週間が過ぎていますので、通常、咽頭炎・扁桃炎は治っています。そこから、溶連菌が検出されることは40%以下ですが、抗体検査でおおかた感染のあったことがわかります。

 尿検査では、血尿・蛋白(たんぱく)尿のほか、白血球や細胞性円柱といって、腎臓に炎症や組織障害の生じていることを示す所見がみられます。また、糸球体の炎症の場で補体(ほたい)が消費されるため、血液の補体価が低下します。さらに、尿に排泄されるべきものが排泄されないため、それらが血液中に溜まってきます。その指標が、尿素窒素やクレアチニンの上昇として検出されます。これが腎機能低下、腎不全(じんふぜん)です。

 溶連菌の先行感染(病気に先駆けて起こった感染症)が証明され、2週間の潜伏期の後に血尿やほかの症状が出現し、さらに、補体の低下が確認されれば急性糸球体腎炎と診断してほぼ間違いありません。

 ここで重要なことは、溶連菌感染から急性糸球体腎炎を起こすのに十分量の抗体が産生されるまで、1〜2週間かかることです。これが潜伏期です。かぜ(ウイルス性の上気道炎)をひいた1〜3日後に血尿が出た場合は、急性糸球体腎炎ではありません。この場合は、慢性糸球体腎炎がかぜを契機に発症したものと考えられます。急性糸球体腎炎は自然に改善する経過の良好な疾患ですが、慢性糸球体腎炎は違いますので混同してはいけません。

 必ずしも必要ではありませんが、診断に疑問が残る場合や重篤な場合は、診断を確実にしたり追加の治療法を検討する目的で、腎生検(背中から腎臓まで針を刺し、腎組織を採る検査)をします。採取した腎組織を顕微鏡で検査すると、確実な診断とともに、組織障害の程度がより詳細にわかります。

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