病気事典[家庭の医学]

しっしん

失神

失神について解説します。

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失神の解説(コラム)

 失神を来す心臓の病気には、徐脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)や頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈などの不整脈が原因のものと、神経調節性失神や起立性低血圧などの一過性の血圧低下が原因のものとがあります。心臓の病気以外で失神を来す病気には、脳梗塞(のうこうそく)やてんかんなどの脳の病気、精尿病、肝不全、精神病などがあります。

アダムス・ストークス症候群

 徐脈性不整脈や頻脈性不整脈などの不整脈が原因で失神を起こす病気をアダムス・ストークス症候群といいます。徐脈性不整脈の場合、徐脈の原因になる薬剤があれば中止し、それでも症状がなくならない場合や高度の徐脈がある場合には、人工ペースメーカー植込術を行います。

 失神を伴う頻脈性不整脈は重症の不整脈なので、専門の病院で心臓電気生理学検査を行い、適切な抗不整脈薬、高周波カテーテル・アブレーション、植込型除細動器などの方法を組み合わせて積極的な治療を行います。

神経調節性失神

 いろいろな場面で生じる自律神経時反射により引き起こされる一過性の血圧低下をいいます。血圧低下が主体のタイプと、血圧低下に加えて徐脈も生じるタイプ、さらには血圧低下よりもむしろ徐脈が主体のタイプとがあります。神経調節性失神には、血管迷走神経(けっかんめいそうしんけい)失神、情動(じょうどう)失神、頸動脈洞過敏(けいどうみゃくどうかびん)失神、状況失神(咳(せき)、排尿、排便、運動、嚥下(えんげ)失神など)が含まれます。

 診断には、失神が生じた時の状況を詳細に調べることが参考になります。確定診断には傾斜試験が有用です。これは60〜80度の傾斜台に寝て、30〜120分間、血圧と脈拍を観察する検査です。神経調節失神の場合、失神あるいは気分の不快を伴う血圧低下が誘発されます。

 ほとんどの場合、生活指導(不規則な睡眠・食生活の是正、アルコールの飲みすぎの禁止)失神を引き起こす状況を避ける、などの注意で予防できます。しかし、なかには失神発作を繰り返し、薬物の内服や特殊な人工ペースメーカーが必要になる患者さんもいます。

起立性低血圧

 立位時に血圧低下を来す病気です。血圧の低下の程度が軽い場合はめまい、立ちくらみ症状が現れ、低下が高度であれば失神を来します。高血圧の薬や血管を広げる薬が原因になる場合もあります。

 血圧低下の程度が高度であったり持続時間が長い場合、また進行性にひどくなる場合などは、神経系の病気が基礎にあることがあります。

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