病気事典[家庭の医学]
しょうにしっしん
小児湿疹
小児湿疹について解説します。
執筆者:
久留米大学医学部皮膚科学准教授 安元慎一郎
湿疹は表皮を中心とする炎症(皮膚炎)で、アレルギーによるものが最も多く、かゆみを伴う紅斑(こうはん)を主な症状とする皮膚疾患です。小児にもしばしばみられますが、湿疹(皮膚炎)にはいくつかの種類があり、疾患と症状に合わせてステロイド外用薬を中心とした治療を行います。
乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)
どんな病気か
乳児期に、皮脂腺(ひしせん)の多い頭や額、こすれる部分を中心に黄色いフケ症状やかさかさを伴った紅斑ができる病気です。
原因は何か
原因はまだ明らかではありませんが、皮脂を分泌する脂腺という皮膚の器官が活発に活動する部位にみられることから、皮脂による刺激や、ヒトの毛包脂腺(もうほうしせん)系に常在するマラセチアという真菌(しんきん)(カビ)の関与が考えられています。
症状の現れ方
小児では皮脂分泌が亢進している時期である生後1カ月ころから発症し、6カ月ころには次第に消退します。顔面、頭部などに紅色の丘疹(きゅうしん)が集まり、紅斑局面を形成します。
検査と診断
症状から診断しますが、乳児アトピー性皮膚炎との区別が時に困難なことがあります。
治療の方法
症状に気づいたら皮膚科を受診します。
入浴時に強くこすらずによく洗い、皮脂の付着を軽減します。炎症が強い時はステロイド外用薬を使用します。
おむつ皮膚炎(ひふえん)
どんな病気か
おむつの当たる部分に発赤や丘疹、浸軟(しんなん)した発疹を生じ、俗に“おむつかぶれ”と呼ばれる病気です。
原因は何か
おむつによる機械的刺激、排尿や排便のあとでおむつ交換が遅れた時の尿や便による皮膚への刺激が、皮膚炎を起こすきっかけとなります。下痢が続いた時、入浴回数が少ない時などに起こりやすい病気です。
症状の現れ方
おむつが触れる部分に一致して、発赤や丘疹、浸軟した発疹を生じます。
検査と診断
カビの一種であるカンジダ菌による皮膚感染症(皮膚カンジダ症)と区別が難しい時があり、角質をとって顕微鏡でカビの有無を検査することがあります。
治療の方法
症状に気づいたら、皮膚科または小児科を受診します。
皮膚を清潔に保ち、おむつを頻回に換えることが重要です。おむつ交換時に柔らかい布を使ってぬるま湯でふいてあげます。炎症が強い時は、弱めのステロイド系軟膏を使用します。
接触皮膚炎(せっしょくひふえん)
どんな病気か
一般に“かぶれ”といわれるもので、外から何かが皮膚に接触して起こる皮膚の炎症反応です。
原因は何か
皮膚に付着した物質の刺激による場合と、アレルギーによる場合があります。原因となるものは多岐にわたりますが、アレルギー性のものでは感作(かんさ)が成立して原因物質を白血球(Tリンパ球)が記憶しているので、同じものが皮膚に付着すれば何度も発症します。
症状の現れ方
触れた部位に一致して紅斑、小丘疹、小水疱(すいほう)がみられ、激しいかゆみを伴うのが特徴です。
アレルギー性の場合、遅延型過敏症といって原因のものが皮膚についたあと、1~2日して症状が現れます。
検査と診断
原因と思われる物質を薄めたものを背部などに貼り、湿疹の反応が起きるかどうかを検査するパッチテストという方法で原因物質を特定することができます。
治療の方法
原因物質を見つけ出して、触れないように注意します。炎症が強い時はステロイド性の外用薬、かゆみ止めの内服薬などを用います。
病気に気づいたらどうする
皮膚科を受診し、パッチテストなどで原因を探すとともに、炎症の状態に合った外用薬で治療します。
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)
湿疹のひとつで、コイン程度の大きさの円形でかゆみの強い紅斑を主症状とし、下腿伸側にできやすい病気です。原因は不明ですが、アトピー性皮膚炎の症状としてみられることもあります。
かゆみが強いのでかいてしまい、適切な治療をしないと治りにくい病気です。自家感作性(じかかんさせい)皮膚炎に進展することがあります。
治療はステロイド軟膏が有効で、かゆみを止めるために抗ヒスタミン薬を内服することがあります。
自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)
すでにある湿疹病変の原発巣が何らかの原因で急性増悪(ぞうあく)し、全身のほかの皮膚に小さな丘疹や紅斑がばらまかれたように多発する(撒布疹(さっぷしん))状態です。
元の病変は接触皮膚炎や下腿の貨幣状(かへいじょう)湿疹が多く、原因としては変性した皮膚蛋白や細菌成分が新たな抗原となり、感作されて全身性に発症すると考えられています。原発巣の湿疹に続いて、漿液性(しょうえきせい)のみずみずしい丘疹や紅斑が全身に多発し、強いかゆみを伴います。
元の病変の治療を行いつつ、撒布疹に対しても抗ヒスタミン薬の内服薬とステロイド外用薬を使います。重症例ではステロイド薬の内服を行うことがあります。
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