病気事典[家庭の医学]

にぶんせきつい

二分脊椎<子どもの病気>

二分脊椎<子どもの病気>について解説します。

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どんな病気か

頸部(けいぶ)、体幹の背部正中には脊髄(せきずい)(神経組織)が縦走しており、脊椎(骨組織)に取り囲まれ、その上を皮膚がおおっています。胎生3~5週に外胚葉(がいはいよう)から脊髄と皮膚が分離・分化しますが、この過程に異常があると二分脊椎、二分頭蓋(ずがい)などの神経管奇形を生じます。

二分脊椎は高頻度にみられる先天異常で、世界的にみた発生率は出生1000人あたり1人前後です。日本においては3000人あたり1人と欧米に比べて低率でしたが、近年増加しています。

二分脊椎は嚢胞性(のうほうせい)二分脊椎と潜在性(せんざいせい)二分脊椎とに大きく分けられます(図29)。部位別では下位脊椎(腰仙部、腰部)が80%以上を占め、上部脊椎(胸部、頸部(けいぶ))はまれです。

原因は何か

二分脊椎の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因として胎生早期における葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、遺伝要因として人種、葉酸(ようさん)代謝の多型(遺伝子の型)が知られています。

症状の現れ方

(1)嚢胞性二分脊椎

嚢胞性二分脊椎は脊髄破裂(せきずいはれつ)、脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)、髄膜瘤(ずいまくりゅう)に分類されます(図29)。診断は出生前に超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には体の表面の所見から明らかになります。脊椎・頭部の画像検査(CT、MRIなど)で病変を詳しく観察し、治療を行います。

脊髄髄膜瘤ではしばしば皮膚欠損による髄液漏(ろう)(脳脊髄液のもれ)があります。多彩な神経症状があり、これには脊髄奇形の直接の影響のほかに、水頭症(すいとうしょう)、脳幹・小脳奇形(キアリⅡ型奇形が約80%に合併する)など合併する病態の影響も加わっています。

脊髄病変による症状は両下肢の運動麻痺、感覚低下と膀胱直腸障害の組み合わせが多く、脊髄奇形の程度が強く位置が高いほど障害が重くなります。膀胱の機能障害(神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう))のため、失禁、残尿や逆流が生じ、しばしば尿路感染症(腎盂腎炎(じんうじんえん))を合併します。熱が出て、他の症状に乏しい時は、急性腎盂腎炎の可能性を考えて、早めに病院で尿検査を受けてください。

(2)潜在性二分脊椎

潜在性二分脊椎では無症状の症例と脊髄障害の症状を呈する症例とがあります。後者の場合、しばしば神経腸嚢胞(しんけいちょうのうほう)、皮膚洞(ひふどう)、類皮腫(るいひしゅ)(図29)、脂肪腫(しぼうしゅ)、脊髄稽留(せきずいけいりゅう)症候群、割髄症(かつずいしょう)などの合併がみられます。水頭症などの合併は、非常にまれです。脂肪腫や脊髄稽留症候群は脊髄障害の症状(嚢胞性二分脊椎に類似したもの)を呈しやすく、また皮膚洞は細菌感染による髄膜炎の原因になります。

検査と診断

嚢胞性二分脊椎の診断は出生前に超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には外表の所見から明らかになります。潜在性二分脊椎の場合は、病変部の皮膚の変化(多毛、血管腫、陥凹など)や脂肪腫の存在が診断のきっかけになりますが、気づくのが遅れることもよくあります。

脊椎・頭部の画像検査(CT、MRIなど)で病変を詳しく観察し、治療を行います。

治療の方法

(1)嚢胞性二分脊椎

出生時に髄液漏のある症例では、出生後48時間以内に手術(皮膚と神経の分離、皮膚の縫合)を行います。術後に水頭症が増悪(ぞうあく)することが多く、その際は脳室腹腔短絡術(のうしつふくくうたんらくじゅつ)(VPシャント術)を行います。下肢の麻痺、変形に対しては、理学療法、装具療法、整形外科的手術を行います。神経因性膀胱に対しては間欠的導尿(かんけつてきどうにょう)、予防的抗生剤内服、手術(尿路変更術)を行います。重症例では呼吸障害(声帯麻痺、喘鳴(ぜんめい)、中枢性無呼吸)、栄養障害(嚥下(えんげ)困難)の対策も必要です。てんかん(約10%に合併する)の治療や知的障害に対する療育が必要な場合もあります。

(2)潜在性二分脊椎

無処置でよい例もありますが、脂肪腫の切除、脊髄稽留の解除、皮膚洞の切除などの手術が必要な例もあります。

病気に気づいたらどうする

嚢胞性二分脊椎患児の治療には脳神経外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームが必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

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