病気事典[家庭の医学]
のうちゅうしょう
嚢虫症
嚢虫症について解説します。
執筆者:
順天堂大学大学院医学研究科生体防御寄生虫学准教授
奈良武司
どんな感染症か
条虫のうち、有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)の幼虫が寄生する病気で、幼虫は袋状(嚢状(のうじょう))の形をしていることから嚢虫と呼ばれています。
有鉤条虫の成虫が産んだ虫卵を飲み込むと、体のなかで嚢虫が形成されます。また、有鉤条虫の成虫が腸に寄生している場合、腸のなかで幼虫が孵化(ふか)・感染して全身に移行し、やはり嚢虫が形成されます。これを自家(じか)感染といいます。虫卵は直径0・1㎜以下で、肉眼では見えません。
症状の現れ方
嚢虫は1㎝ほどのレモン型をしていて、全身のあらゆる場所に寄生します。そのため、寄生した部位に応じてさまざまな症状が現れます。筋肉や皮下組織に寄生した場合は、しこりが感じられます。
危険なのは脳に寄生した時で、けいれんや麻痺など、脳腫瘍(のうしゅよう)に似た症状が起こり、放置しておくと死に至ることがあります。
検査と診断
一般に、症状から嚢虫症と診断するのは非常に困難です。皮下に寄生する場合は、手術で摘出したあとに嚢虫症と判明することがほとんどです。
神経症状を起こした場合は、ただちに病院で精密検査を受けましょう。脳の嚢虫症は、画像検査で脳腫瘍との区別を行い、同時に嚢虫に対する抗体検査で診断します。
治療の方法
手術で嚢虫を摘出するほかに、抗寄生虫薬のアルベンダゾール(エスカゾール)、プラジカンテル(ビルトリシド)が有効です。薬剤治療によって嚢虫が死滅すると、その周囲に強い炎症が起こるので、ステロイド薬を併用します。
脳の嚢虫症では、まず症状を和らげる治療を行い、けいれんがあれば抗けいれん薬を服用します。
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