病気事典[家庭の医学]
まんせいべんぴ
慢性便秘
慢性便秘について解説します。
執筆者:
佐賀大学医学部内科講師
坂田祐之
佐賀大学医学部内科教授
藤本一眞
どんな病気か
大腸は、上部消化管で消化・吸収を受けたあとの残渣の処理と排泄を行う器管です。盲腸(もうちょう)と上行結腸で、液状の内容物から小腸で吸収されなかった水分と電解質を吸収し、横行結腸、下行結腸へと送られ徐々に固形化されていきます。内容物の移送時間は食べた物の性状、腸管の運動や吸収機能、精神状態などで異なりますが、盲腸には4~6時間、S状結腸には12~16時間で達し、排便は一般的に食後24~72時間後に起こるとされています。
便秘とは、糞便が長い間腸管にとどまって水分が減少して硬くなり、排便に困難を伴う状態のことで、通常は便の回数の減少、便量の減少、硬い便、排便困難感、残便感があるときに便秘と呼ばれています。ひどい便秘で苦しんでいる人は約5%とされ、加齢とともに増える傾向があります。
慢性の便秘とは、旅行などで食事や生活環境が急に変化して起こる一過性の便秘ではないものを指します。
原因は何か
便秘の原因は一般的に、機能性便秘(弛緩性(しかんせい)便秘とけいれん性便秘がある)と器質的障害による便秘(大腸の腫瘍や炎症など)とに分けられます。弛緩性便秘は、腸管の緊張や運動の低下で、大腸での通過時間が延びることによって起こります。けいれん性便秘は、左側の大腸の緊張が強いために右側の大腸の通過時間が延びることによって起こり、便秘型の過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)が代表的な疾患です。
そのほかには、薬剤性の便秘(向精神薬、抗コリン薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬など)、代謝・内分泌性の便秘(糖尿病、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)、副甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)など)、神経筋原性の便秘などもあります。
治療の方法
便秘の原因になりえる疾患は、習慣性の便秘以外に、大腸の腫瘍や炎症、狭窄(きょうさく)、向精神薬などの薬剤性、過敏性腸症候群、移動盲腸、先天性巨大結腸症、脳や神経の病気、内分泌の異常などさまざまで、便秘の機序(仕組み)も異なり、原疾患の治療が必要です。
機能性便秘の場合にはストレスを避けたり、生活や食事の習慣を変える必要があります。弛緩性便秘には膨張性下剤(ぼうちょうせいげざい)(便の量を増やして大腸を伸ばし、大腸運動を誘発する)や大腸平滑筋(へいかつきん)運動を促進させる薬剤を投与します。けいれん性便秘には塩類下剤で便を軟らかくし、ストレスや不安が背景にある時には抗不安薬や抗うつ薬を使うこともあります。
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