病気事典[家庭の医学]

じょせいのびょうきのしゅるいとそのどうこう

女性の病気の種類とその動向

女性の病気の種類とその動向について解説します。

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解説(概論)

女性の病気は、妊娠に関連するものとしないものとに大別されます。妊娠に関連しない病気で頻度の高いものに月経の異常があります。多くは内分泌疾患ですが、時にホルモンの異常はなくても月経を直接起こす器官である子宮の異常が原因となることもあります。ホルモンの異常としては卵巣自体の疾患もありますが、これはまれであり、多くの場合は卵巣機能をコントロールする脳下垂体(のうかすいたい)や、さらにその上位の視床下部(ししょうかぶ)の異常によることが多いのです。

女性生殖器自体の病気の主なものは子宮や卵巣の疾患であり、良性のものと悪性のものとがあります。女性の疾患は妊娠や出産と深く関係しており、近年女性が子どもをあまり産まなくなったことにより、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)などの良性疾患、子宮体(たい)がん、卵巣がんなどの悪性疾患が増えています。

子宮頸(けい)がんはパピローマウイルスの感染によるとされており、初交年齢の低下や性的に活発な女性の増加などにより、発病の低年齢化の傾向がみられます。

性の自由化により性感染症(せいかんせんしょう)も増加傾向にあります。とくに若年女性でのクラミジア感染が急増しています。これは、無症状のことも多いのですが、卵管の通過性が障害され、不妊症の原因としても注目されています。幸いに妊娠したとしても、新生児に結膜炎や肺炎などを起こすことがあります。

このように、性の解放によるクラミジア感染の広がりは、少子化にも拍車をかけていると考えられ、社会的にも大きな問題となっています。

不妊症で治療を受けている女性は著しく増えています。その理由として、前述のクラミジアに代表される性感染症の増加があります。また、生殖能力は30代後半より徐々に下降し、40代前半で妊娠の可能性は極めて低率となりますが、40歳近くになって子どもをつくりたいという女性が増えているという事実があります。さらに社会全体として仕事がきびしくなる傾向があり、それによるストレスは、生殖能力を低下させることになるといったことがあげられます。

妊娠に関連するものとして流産、子宮外妊娠、早産、胎児の発育障害、前置胎盤(ぜんちたいばん)、妊娠高血圧症候群など、妊娠の時期に応じてさまざまな異常がみられます。産科の管理が進歩し、子宮外妊娠、前置胎盤などが早期に診断されるようになり、母体が重症になることは極めてまれになっています。

しかし反面、高齢出産が増えるにつれてさまざまな産科異常が増えています。また不妊治療を求める女性の高齢化に伴い、子宮筋腫などの婦人科疾患をもった妊娠例や、糖尿病や高血圧などの生活習慣病合併例が相対的に増えています。

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