病気事典[家庭の医学]
あかいめとしろいめのびょうき
「赤い眼」と「白い眼」の病気
「赤い眼」と「白い眼」の病気について解説します。
執筆者:
京都大学名誉教授
本田孔士
解説(概論)
眼の病気というと、昔はトラコーマなどの感染性のものが多数を占め、「赤い眼」をしているのが特色でした。今でも、角膜、結膜のヘルペス感染症などの眼が赤くなる病気はありますが、重大な眼病の主流は、眼の赤くならない、外から見ていると一見、普通の眼のように「白い眼」をしているのに見えにくい、というものに移ってきました。
たとえば、白内障(はくないしょう)、緑内障で開放隅角型(かいほうぐうかくがた)といわれるもの、網膜変性症(もうまくへんせいしょう)、網膜剥離(もうまくはくり)、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)などの重要な病変は皆「白い眼」をしています。それは、ひとつに、生活・住環境が昔よりよくなり、感染病のリスクが下がったこと、国民が高齢化し、白内障を典型とする老化による病気の割合が増えたことによります。
生活の質(QOL)の向上により、たとえば白内障に例をとると、手術の適応基準が変わり、昔から考えれば極めて早期に診断され、手術が行われるようになりました。眼科ではこの30年、手術に顕微鏡が導入されて手術の確実性が高まり、治療成果が安定化したことが根底にあります。白内障における小切開手術と眼内レンズ移植の普及がその最適の実例です。
一方、硝子体(しょうしたい)外科など、今まで不可能と考えられていた領域にメスが入れられるようになったのも、治療の対象となる眼疾患の内容が変わった大きな要因です。超音波を用いた検査技術の進歩などから、手術前の詳しい診断ができるようになったことが、治療対象疾患の変化に反映されています。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、この十数年、明らかに増えた高齢者の重大な眼底疾患です。これには社会構成人口の高齢化と生活環境の欧米化が関係していると推察されます。
結論として、「白い眼」に重大な眼疾患が内在しているという現実を認識しておくことが大切です。決して、「眼が赤い」ことのみが眼病の症状ではありません。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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