病気事典[家庭の医学]
しゅうかんりゅうざん・ふいくしょう
習慣流産・不育症
習慣流産・不育症について解説します。
執筆者:
兵庫医科大学病院遺伝子医療部教授
澤井英明
習慣流産と不育症とは
習慣流産とは「3回以上の自然流産を繰り返すもの」と定義されます。不育症はしばしば同意語として扱われますが、もうすこし広い概念で、「反復して妊娠はするが、その妊娠を完遂できず、流産や早産、死産などで健常な生児に恵まれない状態」を示します。
一般に妊娠の15~20%は自然に流産するとされています。偶然2回連続して流産する確率は、2~4%と低くはなりますが、あり得る確率です。しかし3回連続する確率は、0・3~0・8%となり、何らかの流産を繰り返す原因があると考えて検査をすることが望まれます。
原因は何か
習慣流産の原因は、母体側の要因として、 免疫学的異常(自己免疫性疾患(じこめんえきせいしっかん)、抗(こう)リン脂質抗体症候群(ししつこうたいしょうこうぐん)など)、内分泌・代謝異常(糖尿病(とうにょうびょう)、甲状腺(こうじょうせん)異常、黄体機能不全(おうたいきのうふぜん)など)、子宮の形態異常(子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や中隔子宮(ちゅうかくしきゅう)など)などがあります。
胎児側の要因として染色体異常があり、ご夫婦のいずれかが染色体の構造異常(転座や逆位)の保因者の場合には、ご本人にとっては何ら病気に関連したものではなくても、流産や先天異常児の出産を繰り返す可能性があります。
また、ご夫婦の間の免疫学的な体質の組み合わせによって流産が起こりやすいという報告もありますが、これは明確ではなく近年は否定的な意見も多くなっています。
治療の方法
原因が判明すればそれに応じた治療を選択します。抗(こう)リン脂質抗体(ししつこうたい)症候群などの免疫学的異常に対しては、ヘパリンやアスピリンなどの抗凝固薬による血栓予防を、子宮奇形に対しては外科的手術療法を行います。原因不明のものに対しては、夫のリンパ球を培養して妻に皮下接種する夫リンパ球免疫療法や、γ(ガンマ)グロブリン大量療法などが試みられていますが、これらの有効性についてはまだ確立されたものではありません。
ご夫婦のいずれかが染色体構造異常の保因者の場合で、これが習慣流産の原因と考えられる場合には、着床前診断(受精卵診断)が行われることもあります。
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