病気事典[家庭の医学]

あれるげんめんえきりょうほうとちりょうやくのしゅるい

アレルゲン免疫療法と治療薬の種類

アレルゲン免疫療法と治療薬の種類について解説します。

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どんな治療法があるか

アレルギー疾患の治療法として、原因に対する根本的な治療としてはアレルゲン免疫療法(以前、減感作療法と呼ばれたもの)があります。また、対症的な治療としては、種々の薬物療法がよく発達しています(表2)。

アレルゲン免疫療法(めんえきりょうほう)

アレルゲン免疫療法(以前の減感作療法)は、アレルギー性疾患の原因アレルゲンを次第に増やしながら注射してゆき、アレルゲンに対する免疫を得ようとする治療法です。

喘息(ぜんそく)や鼻炎などのアレルギー性気道疾患が主な対象になります。喘息や鼻炎の重症度を軽減すること、薬物を減らすことを期待して行われます。位置づけは薬物の補助であって、いわばオプションです。

喘息では通年性の環境抗原であるダニに対して、鼻炎ではダニとスギ花粉とが主な対象になります。ダニの場合、ダニを主成分とする室内塵(しつないじん)(ハウスダスト)を治療に用いますが、今日、日本ではこの治療を行う施設は少なくなっています。アレルギー科か、喘息では呼吸器内科、鼻炎では耳鼻科で、おのおのアレルギーを専門とする医師に相談することをすすめます。

なお、最近、重症のアレルギー性喘息に対する原因治療として抗IgE抗体(ゾレア)が開発され、治療に用いられるようになりました。

治療薬(ちりょうやく)の種類(しゅるい)

副腎皮質ステロイドホルモン

通常、単にステロイドと呼ばれます。吸入や点鼻、軟膏などの局所薬と、経口薬や注射などの全身薬とがあります。通常は局所薬を中心に用い、全身薬は喘息増悪期(ぞうあくき)や重症喘息のコントロールなどに用います。

吸入ステロイドは、慢性喘息の第一選択治療薬です。用量・用法を守って用いれば安全であり、喘息のコントロールには欠かすことのできない、非常に重要な治療薬です。

通常、朝晩の1日2回、発作の有無に関係なく定期的に吸入することが大切です。吸入のあとで必ずうがいをします。全身の副作用はなくても、咽喉頭の刺激症状が出ることがあるためです。

点鼻ステロイドはアレルギー性鼻炎鼻閉症状などに高い効果を発揮します。

軟膏・クリームなどの皮膚科用薬はアトピー性皮膚炎の湿疹に大変よく効きますが、顔などに強力な軟膏を長く塗ると副作用が出ることがあり、一方で、その病変部に力の及ばない弱い軟膏を長く塗っていても意味がありません。使用に際しては専門医の指示に従う必要があります。

全身ステロイドについては、喘息の増悪時には一定期間、十分な量を用いることが大切です。長期投与されるのはアレルギー疾患では重症喘息の場合ですが、長期間用いると、胃潰瘍糖尿病骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、易(い)感染性(感染しやすくなる)、精神障害などのさまざまな副作用が生じることがあるので、専門医の判断で必要最少量が用いられます。

免疫抑制薬

アトピー性皮膚炎の顔などの病変に対して、免疫抑制薬(めんえきよくせいやく)タクロリムス(プロトピック軟膏)が用いられることがあります。ステロイドの減量効果があり、また良好なコントロールを維持するのに威力を発揮します。使用は専門医の判断によるべきです。

抗アレルギー薬

アレルギー反応が起こると、局所にヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離され、喘息、鼻炎、皮膚炎などの症状をもたらします。これらの遊離を抑える薬と、作用を阻害する薬などを総称して抗アレルギー薬といいますが、国際的には作用阻害薬が主流になっています。

抗ヒスタミン薬は主に鼻炎の鼻水やくしゃみ、皮膚のかゆみ、じんま疹などに用いられます。副作用に眠気があります。最近は1日1回型の製剤や、眠気が出にくい薬も多数出てきました。なおセレスタミンという薬は、抗ヒスタミン薬とステロイドとの合剤なので、使用は短期間にとどめたほうが安全です。

抗ロイコトリエン薬は慢性喘息の維持管理薬として有用で、鼻炎の鼻閉(びへい)症状にも有効です。鼻炎を合併した喘息などにはとくにすすめられます。また、鎮痛解熱薬で喘息が生じる、いわゆるアスピリン喘息にはとくに効果が高いといわれます。眠気は出ません。

そのほかに、抗トロンボキサン薬は喘息や鼻炎の鼻閉症状に用いられることがあります。炎症を調節するサイトカインがつくられるのを抑制するとされるアイピーディーという薬もあります。

気管支拡張薬

喘息で用いられます。5歳以上の慢性喘息では、基本的に吸入ステロイド療法がすすめられますが、何らかの喘息症状が平均して週に1回以下、間欠的にのみみられるようなケースでは、気管支拡張薬の頓用(とんよう)だけで様子をみることもあります。

気管支拡張薬には交感神経β2受容体刺激薬(β2刺激薬)、テオフィリン薬、抗コリン薬があります。このうち喘息でよく用いられるのは、β2刺激薬とテオフィリン薬です。長期使用する場合には、吸入ステロイドを十分に用いたうえで、その補助として用いられるべきです。

β2刺激薬

β2刺激薬は、交感神経で気管支を拡張する方向にはたらくβ2受容体を刺激する薬です。

吸入薬として、発作止めとして用いられる短時間作用型の噴霧器(ふんむき)と、中等症以上の喘息に維持管理薬として用いられる長時間作用型のパウダー製剤のセレベントがあります。

また最近は、長時間作用型β2刺激薬も吸入ステロイドの配合剤(シムビコート、アドエア)が使用できるようになっています。発作止めの噴霧器はあくまでも緊急避難的に用いられるべきで、しばしば用いるような場合は医師によく相談する必要があります。

β2刺激薬は、効果が高いのですが、あくまでも吸入ステロイドの補助薬であって、これ自体には喘息の基礎病態である気道の炎症を抑える作用はありません。吸入ステロイドを十分な量で、規則正しく用いてもコントロールが得られない喘息においてだけ、補助的に使用されるべきです。小児では重症で持続性の喘息以外には用いるべきでありません。

貼付(ちょうふ)製剤ではホクナリンテープがあります。1日1回入浴後に貼れば終日効果があり、手軽であるという利点があります。

経口薬としては短時間作用型のものから長時間作用型のものまで多数あり、後者は喘息の維持管理薬として用いられてきましたが、最近は吸入薬や貼付製剤が主流になってきています。

β2刺激薬の副作用には動悸(どうき)や不整脈などの心臓刺激性と、手指の震えがあります。

テオフィリン薬

テオフィリン薬には、主に維持管理用に用いられるテオドールやユニフィルなどの経口薬と、発作時に用いられる注射薬であるネオフィリン、テオドリップがあります。

テオフィリンは気管支拡張作用と、喘息の基礎病態である気道の炎症を軽減する作用とを併せもっています。そこで軽症例では、この製剤を単独で用いることも容認されています。この点が吸入β2受容体刺激薬とは違っています。

しかし、テオフィリン薬が本領を発揮するのは、中等症以上の喘息で吸入ステロイドの補助薬として用いられた場合であり、すぐれた併用効果を表します。

副作用として胸やけ、吐き気などの胃症状、心刺激性、不眠などの中枢刺激症状、多尿などがあります。血中濃度が上昇しすぎるとこのような副作用が現れるので、血中濃度をモニターしながら使用することがすすめられ、また、最近は低用量で用いられる傾向にあります。

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