病気事典[家庭の医学]

そくとうこつこっせつ

側頭骨骨折

側頭骨骨折について解説します。

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どんな外傷か

側頭骨には、聴覚の神経、体のバランス機能を担う平衡感覚の神経、顔面表情筋を司る顔面神経などさまざまな神経が走っています。ですからここを骨折すると、これらの神経が障害されていわゆる「神経症状」が出てきます。また、脳を支える頭蓋を構成する骨のひとつですから、脳のダメージも伴っていることがあり、意識障害を起こす場合もあります。

外傷の種類、打撲の強さによって、命に関わる重症からごく軽傷の場合まであります。必ず専門医の診察を受けたほうがよいでしょう。

症状の現れ方

顔の動きが悪い、水を飲むと口からもれてしまう、笑うと顔がゆがむ、という場合は顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)が起きています。聞こえが悪い場合は骨折が中耳に及んで、鼓膜(こまく)が破れたり、耳小骨(じしょうこつ)が損傷している可能性があります。さらに耳鳴りめまいが合併していると、内耳も同時に障害されていることを意味しています。

頭部を強打している場合には、意識障害を起こして頭がぼーっとしているため、これらの症状をはっきりと気づかない場合もあります。骨折によって、耳から血液が出たり、そこに細菌が感染するとうみが出る場合もあります。水のようにさらさらした液体が出てくる場合は、脳脊髄液(のうせきずいえき)の流出(髄液漏(ずいえきろう))が考えられます。

検査と診断

外傷の起こり方と前述の症状によって側頭骨骨折が疑われた場合には、X線検査が診断に最も役に立ちます。耳のX線検査、頭部CT、側頭骨のターゲットCTで骨折の部位、程度を診断します。側頭骨長軸に平行な骨折線のある縦骨折と、垂直な横骨折に分類され、後者のほうがより重傷です。内耳骨包(ないじこつほう)(内耳を包む骨:骨迷路(こつめいろ))が骨折しているかどうかが診断のポイントです。

治療の方法

通常は入院して安静にします。感音難聴(かんおんなんちょう)、顔面神経麻痺の保存的治療には副腎皮質ステロイド薬、止血薬、アデノシン三リン酸(ATP)、血管拡張薬、ビタミン剤などを使用します。

安静にしても改善しない髄液漏、高度の麻痺がある即発性顔面神経麻痺、内耳のなかにある外リンパ液が中耳に漏れ出てくる外(がい)リンパ瘻(ろう)による急性難聴の時には、早期に手術を行います。また、受傷後数カ月たっても改善しない伝音難聴も手術を行います。

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