病気事典[家庭の医学]
らんげるはんすさいぼうそしききゅうしょう
ランゲルハンス細胞組織球症
ランゲルハンス細胞組織球症について解説します。
執筆者:
青森県立中央病院小児科副部長
高橋良博
弘前大学大学院医学研究科小児科学教授
伊藤悦朗
どんな病気か
皮膚から侵入してきた抗原は表皮にあるランゲルハンス細胞に取り込まれ、リンパ節へと達してTリンパ球に抗原を提示します。このようなはたらきをする樹状(じゅじょう)細胞の一種であるランゲルハンス細胞と同様な形質をもった細胞が、病変部位で異常に増殖する疾患です。ヒスチオサイトーシス(細網内皮症)とも呼ばれます。
原因は何か
従来は何らかの免疫異常によるランゲルハンス細胞の二次性増殖と考えられてきましたが、最近は腫瘍性の疾患であることを示唆する報告がされています。しかし、現在でも原因不明の疾患です。
症状の現れ方
0~3歳くらいの乳幼児に好発します。骨の病変が約80%に認められ、骨痛と周囲の腫脹(しゅちょう)、病的骨折を起こすこともありますが、無症状でX線検査を行ったときに初めて病変に気づくこともあります。脂漏性(しろうせい)湿疹に似た発疹や出血性小丘疹(しょうきゅうしん)などの皮膚症状、中枢神経に浸潤(しんじゅん)して尿崩症(にょうほうしょう)を合併することもあります。多臓器浸潤型では発熱、肝脾腫(かんぴしゅ)、リンパ節の腫脹などの全身症状も示します。
検査と診断
生検(組織をとって調べる)が診断を確定するために必須です。免疫染色でのS‐100蛋白とCD1aが陽性であること、電子顕微鏡でバーベック顆粒(かりゅう)が陽性であることが診断の決め手になります。全身の骨のX線検査は有用であり、小児では頭蓋骨の打ち抜き像(多発するコイン状の透亮(とうりょう)像)は本疾患を疑わせる重要な所見です。
治療の方法
一般的に、単独病変に対しては注意深く経過観察をするか局所療法が行われます。多発性の病変に対しては副腎皮質ステロイド薬、ビンクリスチン、メトトレキサートなどを併用した化学療法が行われます。
増悪と改善を繰り返し慢性に経過しながらも治る場合が多いのですが、2歳以下の発症で多発性、かつ骨髄・肺・肝・脾に浸潤が認められる、初期治療に反応が悪い例では予後不良と考えられ、より強力な治療が必要になります。
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